タラヨウの葉

Henry Miura

家内の友人からタラヨウという樹木を教えてもらった。木の葉の裏に竹串などの尖ったもので字を書くと、すぐに黒く文字が浮き上がってくる。葉に文字が書けるのは、植物の葉を傷つけた時に表れる死環のせいだという。死環というのはなんだろうと、これもインターネットで検索したので、注を読んでください。
タラヨウは特にこの死環がはっきり表れる木として知られていて、昔は木の葉の裏に経文を書いたともいわれ、お寺に良く植えられているとのこと。
 平成9年に郵政省がこの木を「郵便の木」とした。郵便局にはよく植えられているようだ。葉の裏に通信文を書き、表に住所ラベルを貼り、80円切手を貼れば配達してくれるそうだ。

これで恋文でも書いタラヨウ、恋が成就するんでないか。小生は友人がわざわざもって来てくれたタラヨウの葉に般若心経の一節を試しに書いてみた。(右の画像)小さな文字もかなりはっきりと浮き出てきた。 最近、わがマンション内の街路樹や近くの公園の樹木、草木にきれいな珍しい花が咲くので、散歩がてら写真を撮ったりしている。インターネットや植物の本を見ると、名前がみなカタカナになっている。「ユリノキ」、「エゴノキ」、「サラソウジュ(ナツツバキ)」etc.、たぶん学問的な理由なのだろうが分らない。どなたか教えてください。
 というわけで、タラヨウもカタカナで書かれると命名の由来が想像できない。
字を書けるということで、古代インドで葉に経文を書いたという、ヤシ科の貝多羅樹(バイタラジュ)になぞらえて「多羅葉」とされたそうで、これが「葉書」の語源になったとのこと。

<注>
死環

モチノキ科やモクセイ科などの葉を、強く熱したり、逆に強く冷やしたり、あるいは細い棒の先で引っ掻くと、葉の色が褐色から黒色に変わる。これは、おそらく、細胞内の微細構造が破壊されて酸化酵素がタンニンを酸化するためだと思われる。このことを利用すると、葉に棒で字を書くことが出来る(「葉書」の語源、という説もある)。また、タバコや線香の火を使うと変色部がリング状になる(中心部は、酸化の前に酵素が熱で失活するために変色しない)。このリングのことを「死環」という。

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死環が出た葉の断面(種類はモチノキ(モチノキ科))。図の上半分は緑色を保っている部分。下半分が熱で黒変した部分で、柵状組織や海綿状組織の細胞の中身が薄く茶色になっている。

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紅茶や烏龍茶が茶色なのは、茶の葉をつぶしたり引きちぎって適温に保つことによりタンニン(カテキンなど)の酸化反応を起こさせるためである。緑茶の場合は、茶の葉をすぐに蒸して、水蒸気の高温で酵素を失活させ、鮮やかな緑色を保つ。
皮革工業では、原料である動物の「皮」[skin]を「革」[leather]に加工する過程で、脱毛や軟化処理に続いて、鞣皮(じゅうひ)=皮を鞣す(なめす)こと=という作業が行われる。鞣皮は、皮の主成分であるコラーゲン繊維(タンパクの一種)にタンニンを結合させ、皮の安定性と強靱さを高める作業で、樹木の皮から取ったタンニンが主に使われる。「タンニン」という言葉も「鞣す」(英語で"tan")から来ている。現在の皮革工業では、植物から取ったタンニンだけでなく、化学合成タンニンや塩基性硫酸クロムなどの薬品も使われている。参考URL: 「革について」(富田興業株式会社)。
タンニンはフラボノイド・アントシアンなどの植物色素と類似の化学構造を持ち、総称して「ポリフェノール」と呼ばれる。タンニン一般に関する参考URL: 「タンニン(tannins)とクロロゲン酸類(chlorogenic acids): コーヒーに含まれると言われている「タンニン」その正体は?」(旦部 幸博氏)