「スローライフ」(筑紫哲也:岩波新書)

 筑紫哲也は元朝日ジャーナルの編集長から筑紫哲也NEWS23のニュースキャスターになったことは知っている。NEWS23も毎日見るわけではないが、朝日ジャーナルは小生若かりし頃よく読んでいたので、筑紫さんは昔からまじめで硬いというイメージはあった。
 題名が気になったのと、筑紫哲也ということでどんなことを書いているのかと読んでみた。もっと軽い本かと思ったが、なかなかどうして、いいことが書かれている。

 “緩急自在のすすめ”と副題にあるように、スローかファーストかの二者択一の議論ではなく、両義性の中で議論を進めている。寿司と蕎麦は、スローでありファーストでもある緩急自在フードであるとか、スローな旅、スロ−ウェア、ロハス(Lifestyles Of Health And Sustainability)の勧め等々、いろいろな角度からスローライフを語っている。

 筑紫さんが故郷(大分県日田市)で「自由の森大学」や「森のゆめ市民大学」(富山県魚津市)を創設し学長を務めたことを本書で初めて知った。忙しいマスコミの社会で生きながら、一方でこういう活動をしてきたことに頭が下がる。藤原正彦が「国家の品格」で昨今の日本を憂えていることは頷けるが、筑紫さんの、行動しながら謙虚に“ファースト”を憂える姿勢にむしろ“品位”を感じる。

 先日、感想を書かせていただいた「伊那谷の老子」にも通じる生き方とも思った。
 この本を読んで、これからも自らに「スローエデュケーション」と「スローエイジング」を課して、緩急自在に、「観自在」に生きていきたいと思った。
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以下は本の帯から

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ゆっくり、ゆったり、ゆたかに
食生活・旅・教育などの新しい潮流を描く

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IT革命の進行の下で、いま暮らしと仕事のあらゆる領域でスピードや効率を求める勢いが加速している。だが、他方でその潮流への根本的な懐疑も確実に拡がっていよう。「秒」に追われるニュースキャスターならではの痛切な問題意識に立って、「スロー」に生きることの意味と可能性を全国各地の食生活・教育・旅などの実例から考える。

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スローライフ―緩急自在のすすめ (岩波新書)

スローライフ―緩急自在のすすめ (岩波新書)