「釈迦」(瀬戸内寂聴)

 以前に買ってあったのだが読まずにいた。玄侑さんと寂聴さんとの対談集、「あの世、この世」を読んで、読んでみたくなった。今まで釈迦の物語や釈迦の弟子たちの話はいろいろな書物や、各種のお経、仏教解説書で読んできた。やはり、釈迦という人物を頭ではなくハートで理解するには、仏教書や解説本よりも原始仏典や小説で読むほうが情感に訴え、心に残るところが大きい。
 釈迦の10大弟子“多聞第一”のアーナンダを通して、釈迦の涅槃に至る過程を書いている。尼僧、女性作家である寂聴さんが故といおうか、ウッパラヴァンナーら尼僧達の悲しい話、尼僧プラクリティ、釈迦の妻だったヤソーダーラーの死後の独白、恨み・愛・哀しみが織り交ぜられている。
 「観無量寿経」の中の“王舎城の悲劇”、阿闍世王子(アジャータサットゥ太子)の話もわかりやすく興味深くかかれている。
 話は飛躍するけど、こういう話を仏教(宗教)とかお経とかで聞かせるのではなく、ひとつの物語として若い時に読み聞かせるべきではないかと思う。
 寂聴さんは、この「釈迦」の中で「尼僧の告白」の中の話も取り込んでいるのだろうか。私はまだ「尼僧の告白」を読んでいない。「尼僧の告白」や「仏弟子の告白」の中の内容も小説化してくれると面白いのではないかと思う。

釈迦 (新潮文庫)

釈迦 (新潮文庫)