「憲法九条を世界遺産に」(集英社新書)

  太田 光 (著), 中沢 新一 (著)
 この本、題名がひっかかっていた。大田光というのが漫才の「爆笑問題」の一人ということは知っている。爆笑問題の漫才はほとんど見たことがなく印象には残っていない。日曜朝の「週間ブックレビュー」に何度か出演しているのを見た。大変な読書家で、なかなか鋭い発言をする人だという印象はあった。彼の書いたものを読んだこともなかったし、「大田光が総理大臣だったら・・・」というテレビ番組も見たことがない。
 その大田光と、あの中沢新一が「憲法九条世界遺産に」という題での対談を本にした。週間ブックレビューでこの本も紹介された。どんなことが書かれているのか、どういう対談が展開されているのかに興味が湧いて早速読んでみた。
 「宮沢賢治日本国憲法」、「憲法九条世界遺産に」他、いくつかの章があり、「桜の冒険」「戦争を発動させないための文化」など新鮮な発見をした。
 中沢新一は好きな作家の一人で、本はそこそこ読んできた。しかし、正直な所、失礼ながら若手漫才師の大田光中沢新一とどういう対談ができるのだろうかと思っていた。あにはからんや、大田光の感性の素晴らしさと、“ちえ”の深さに恐れ入った次第です。
 こう言っては失礼だが、中沢さんと太田さんの、文学漫談、憲法漫才といった趣で、ボケはないが、大田光の“ツッコミ”の面白さを感じた。
憲法九条問題を異なった視点から考えるだけでなく、現代においての日本文化、日本人のあり方を考えさせられる本でもあると思う。内容の高度さに比して、分かりやすく、おもしろくまとめられていて、一気に読んでしまう。老若男女を問わず多くの方に読んで貰いたいと思う。
 以下はamazonの紹介(本の表紙から)

実に、日本国憲法とは、一瞬の奇蹟であった。それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、敗戦からようやく立ち上がり二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、奇蹟の合作というべきものだったのだ。しかし今、日本国憲法、特に九条は次第にその輝きを奪われつつあるように見える。この奇蹟をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。お笑い芸人の意地にかけて、芸の中でそれを表現しようとする太田と、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢の、稀に見る熱い対論。宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は…。

                                                                                                                      • -

理想社会の具現を目指したアメリカ人と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との奇蹟の合作、日本国憲法。特に9条は次第にその輝きを奪われつつある。この奇蹟をいかにして次世代に伝えていくべきかを問う、熱い対論。