「懐かしき日々の思い出」(多田富雄)

 多田さんが脳梗塞で倒れる前に書かれていた随筆集を読んだ。
多田さんの随筆は「独酌余滴」が素晴らしかった。上記の本は、折に触れて書きとめられていたもののようだが、どのひとつをとっても味わいがある。
 民族文化の遺伝子、踊る遺伝子、生命のルール、生命の階層性、死の階層性、死は進化する、どの一篇も免疫学者ならではの論理と多田さんの文学的感性が、興味深く、かつ、楽しく読ませてくれた。