第三の脳:皮膚から考える命、こころ、世界

     傳田光洋著:朝日出版社
 週間ブックレビューで紹介された、傳田光洋さんの「第三の脳」を読んだ。この人、資生堂のライフサイエンス研究センターの主任研究員とのこと。商売柄、長いこと、いろいろな角度から皮膚について研究してきた。学者や、皮膚科医と異なり、自由に皮膚について語っている。彼自身が小さいときからアトピー性皮膚炎に悩まされて、それといかに戦ってきたかの話も説得力がある。
 皮膚の細胞は可視光の三原色にそれぞれ異なる応答を示すことがわかったという。つまり、皮膚は色を感じているわけだ。又、脳と皮膚は細胞の生まれが同じという。脳だけが身体の全てをコントロールしているのではなく、脳の機能とされる意識は、脳だけでなく、骨や筋肉や皮膚が、意識を正常に維持するためには必要という。つまり、皮膚は情報処理をする臓器である、第三の脳と言えるものだという。
 麻雀をやったことのある方ならご存じの「盲パイ」、ちょっと訓練すれば親指でなぞるだけで、ほとんどの牌が何が彫られているか当てることができる。この本の中で、指の感覚が敏感なのは指紋があるためだという説も紹介している。指はいうまでもないが、皮膚というものは、我々が普通に考えているよりは、はるかデリケートにできているようだ。また、目の錯覚だけでなく、触覚の錯覚もあるという話なども紹介している。
 人は身体から毛をなくすことことによって、スキンシップというコミュニケーションを手に入れるべく進化した。つまり全身を顔にしたのだという話など面白かった。
 となると、禿げる男は、禿げない男よりより進化していることになるのだが・・・。
 鍼灸医学、東洋医学、テレパシー、気功のことなどにも、皮膚という立場から研究し、語っている。
 女性の美容上の観点から、この本で「第三の脳 皮膚」を考え直すのも一法であると思った。
 妙齢さん方、一読の価値ありですよ。

第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界

第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界