「漱石俳句を愉しむ」

 フォト五七五をやろうと思い立ったが、ここのところの寒さで出かけることも少なく、五七五が浮かぶような写真も撮れていない。 また、いざ、五七五を考えようとしても、なかなか言葉がつながらない。そこで、少しは俳句の本を読んで勉強しようと、積ん読になっていた、「漱石俳句を愉しむ」(半藤一利)、「俳人漱石」(坪内稔典)「季語集」(坪内稔典)、「俳句とは」(山本健吉)などを読んだ。漱石俳句については大分以前から読んでみたいと思っていたのだが、なかなかこういったものを読む心境になれなかったので、この歳になるまで積んであった。
 半藤一利さんの「漱石俳句を愉しむ」は面白かった。半藤さんは近代史が専門だと思っていたら、漱石に関してはかなりの研究をされており、漱石に関する本も数冊書いていることを知った。漱石正岡子規の交友話や、漱石俳句の子規による添削の話、落語や、歴史に題材をとった俳句など、面白く解説してくれている。
 
 不立文字白梅一本咲きにけり
 木瓜咲くや漱石拙を守るべく
 
 「拙を守る」とは漱石がもっとも好んだ言葉であり、終生持ち続けた生き方の基本だったという。出所は、陶淵明の詩、「拙を守りて園田(えんでん)に帰る」か『老子』の「大巧は拙のごとし」からだろうという。「浮生六記」という本の中に、“守拙の生き方”みたいなものがあったと紹介されていた。
  1.他人の昇進栄達について語らぬこと。
  2.訴訟問題や時事問題について話さないこと。
  3.昇進試験について論じないこと。
  4.賭博をしないこと。
我ビジネスマン時代、凡人Henryは凡人に徹することはできず、拙を守る生き方はできていなかったことを反省する。
 漱石はご存じのごとく、漢籍漢詩、歴史、禅などについてかなりの素養がある。あらためて、この本を読んで、漢籍や落語などの知識がないと漱石の俳句の味わいが減殺されることがわかった。
 いまさら、漱石さんの俳句を味わうために、漢籍漢詩などを勉強するわけにはいかないが、半藤さんのこの本で、なるほど、そういう話や詩などをベースにして作られた俳句なのかということがわかって、楽しく味わえた。

 坪内稔典さんの「俳人漱石」は、漱石正岡子規坪内稔典が、漱石俳句について、俳句制作時の状況、俳句批評などを、膝を交えて語り合うという設定になっている。また、話の中で、漱石と子規の交友風景などが出てきて、なかなか面白かった。

 山本健吉の「俳句とは何か」を読んで、俳句とは色々と歴史や流派、規則、型などがあって、あらためて難しいものだと思った。
 今から、本格的に俳句をやろうと思っているわけではないし、自分がまともな俳句が作れるようになるとも思わない。俳句でもなく、川柳でもなく、自由な五七五、一行詩のようなもので、自分が楽しめればいいかなと思っている。
 それにしても、獲得語彙数が少ないので、言葉の組み合わの創造力が乏しい。今しばらく、俳句や川柳を読んだり、歳時記や季語の勉強をして味わいのある日本語の語彙を増やしたいと思う。