兄の七回忌

 兄(次兄)の七回忌の法事をした。我が家の菩提寺は港区のオーストラリア大使館の前にある永昌山龍源寺というところ。子ども達になんの財産も残さなかったオヤジだったが、寺だけは一等地にある。長兄のところが娘だけなので、次兄が生前に代々の墓を引き継ぐことを決めていた。三男坊のHenryは残念ながらこの一等地の墓には入れない。そろそろ自分の墓も買っておかないと、残されたものに面倒をかけてはいけないと思い始めている。
 墓を作っても、あの世から誰が良く墓参りに来ているかなんて、分かるわけではないのだから、本人としては、墓はいらないし、せいぜい、遺骨(灰)を海に散骨してくれればいいと思っている。
 一方で、今回の兄の法事も、「仏の兄」が、普段はあまりつきあいの多くなくなった兄弟、甥、姪たちを呼んで、再会させてくれていると考えることもできる。それと、日本人の中にプリミティブに存在する祖霊信仰といったものを考えると、墓参りや法事にも一定の意義はあると思う。
 私が四歳で母が他界、二十三歳で父が他界したため、小さいときからこの寺には、何度墓参りや、法事に来たか数え切れない。この日の法事、このお寺の3代目の住職が営んでくれた。お経の後の法話も新しい話題を話してくれた。そんなこともあって、私のキザな自作Unchiku名刺をお渡ししながら、ちょっと仏教談義をした。上田紀行さんの若手仏教者の勉強会などにも参加されているとのこと。
 こちらの住職のような若い僧侶が、もっと頑張って、町なかの寺の改革に取り組んで欲しいなと思う。お寺や神社が、地域ともっと密着して、住民のこころの安息所、宗派にとらわれない、仏の教えや八百万教などの勉強会場のようなものにならないものかと思う。そうことを既にやっている寺院も多いが、一般の人や、近所の住民は知らないことが多いのではないだろうか。檀家さんでなくても自由に参加できるよう、宣伝、広報もして欲しい。寺の経営も最近は苦しいところが多いとも聞く。
 朝日カルチャー講座の仏教講座や仏教美術講座などは、こういうあまり大きくないお寺で開催したらいいのではないかと思った。朝日カルチャーの講座の参加料が800円。高くては年金世代は参加しにくいが、1000円以下であれば、抵抗はないと思う。最近は仏教に関心の強いシニア(60歳以上)も増えた。こういう人を対象に、地元のお寺で、こういう仏教講座や文化講座を開いたら良いのではないかと思う。
 とまれ、「ほとけの次兄」が、皆、六十歳以上になった兄弟を久しぶりに集わせてくれた。話し好きで、酒の好きだった兄貴もあの世から降りてきて加わりたかっただろう。兄貴も天上から、われわれの会話を楽しんでくれたことと思う。南無阿弥陀仏、合掌!