「オスとメス 性の不思議」(長谷川真理子:講談社現代新書)

 鳥のMiyaさんがなぜ鳥はオスがきれいなのだろうと書かれていた。
以前、上記の本を読んでオスとメスの不思議について色々と学ぶところがあった。人間のオスは美しいメスを好む。鳥のメスは美しいオスを好むのだ。もっとも、人間のメスも若いイケメンやヨン様の類を好むようではあります。
 この本によると、鳥にも色々あり。クジャクは雄の羽のきれいな目玉模様の数の多いものを好み、コクホウジャクという鳥は一夫多妻制で、尾の長いオスを選り好みするという。
 オスはメスに選んでもらうために涙ぐましい努力をしているものもある。パプアニューギニアやオーストラリアに生息する、庭師鳥やあずまや鳥というのは、メスに来てもらうために、木の葉、石、貝殻などで巣(家)をきれいに作り、マイホーム?でメスを待つ、迎えるものもあるという。また、ある昆虫のメスは、より大きなえさを持ってくるオスを選ぶという。ヒトのオスとしても身につまされる話だ。
 なぜ、メスがそのようなオスを選り好みするように進化してきたかは、分からないことが多いのだが、生物の種毎に、配偶者選びのための工夫を、長い時間の中で進化させてきたことが、不思議であり、また、面白い。 
 この本で一番印象に残っているのは、「究極のヒモ」と題しての、ちょうあんこう(魚)の話だ。この魚のオスは卵からかえると深海の真っ暗な海の中で同種の雌に出会うとメスの身体にくっつく。口はメスの皮膚と同化し。そのうち、目も脳も消化器も退化していく。オスの身体はすっかりメスの皮膚の一部となり、栄養は全部、メスからの血流にのって運ばれ、完全に養われる身となるという。
 それなら、オスの存在価値はないのでは? いやいや、オスの精巣だけは退化しないのだという。つまり、このアンコウのオスは、定期的に精子を製造し、メスの体内に送り込むのです。
 このアンコウは深海という不便な環境で、相手を見つけるコストを少なくするための方策としてこのような進化をしてきたのだという。
 世の中には、雌雄同体の生物もある。ならば、なぜこのアンコウは雌雄同体を選ばなかったのか。そこに、生物界が性の分化という方法を選択し、進化してきたかという不思議がある。
 この本、鳥だけでなく、魚、昆虫などの「性の不思議」を学術的ではあるが大変興味深く説明しています。
 ヒトのオスとして考えさせられることがたくさんある、面白い本です。Henryもアンコウのオスに生まれたかったか!?
 是非ご一読をお勧めします。
昨日ご紹介した、福岡伸一の「できそこないの男たち」と併せ読むと、男(オス)というものが、ちょっと情けなくなる。男性を決定するY染色体は、今でも他の染色体よりだいぶ小さい。これが年々小さくなっているという。このままいくと、5,6百万年後には、Y染色体がなくなってしまう可能性があるという。5,6百万年後とはだいぶ先のことと思うだろうが、生物の誕生が38億年前、人類の誕生500万年前、生物の進化から見るとそう長い時間ではない。もっとこの時間が短くなる可能性もあるという。Y染色体がなくなってメスだけになったら、人類は滅亡だろうか、それともアンコウのような進化を遂げるのだろうか???
 こんな本を読むのも隠居道の楽しみだ。