「納棺夫日記」(青木新門)

 映画「おくりびと」を見た後、「納棺夫日記」を読んだ。15年前に本木雅弘さんがこの本と出会い、読んで、感動し、映画「おくりびと」が誕生したという。
 青木新門さんは「私はこの映画の原作者ではありません」という。雑誌、新聞で、原作にあるような宗教色は映画にはないといっていた。映画は良かったし、良くできていると思った。青木さんが言いたかったこと、「納棺夫日記」でどんなことが書かれているのか読みたくなった。たまたま家人が文庫本を買ってきたので、先に読ませてもらった。
 第一章、第二章は映画で取り上げられた内容が多かったが、宮沢賢治の童話、金子みすずの詩、良寛道元などの仏教にも言及しながら、映画よりも、重く、深く、人の生死、いのちについて語っている。
 第三章は、「ひかりといのち」と題して、親鸞哲学、親鸞の信仰、仏教哲学、について語っている。
 納棺夫になるまでのいろいろな体験、納棺夫になってからの体験を通じて、観念的にではなく、親鸞、仏教を語っているところに共感した。青木さん自身による「『納棺夫日記』を著して」や、あとがき、高史明による、「光のあふれる書『納棺夫日記』に覚える喜び」の文も味わいがある。
 インターネットで「おくりびと」「納棺夫日記」を検索すると、いろんな感想、意見が載っている。日本人が今、何に感動し、何を求めているのがわかる。
 この本を読んで、多くの人たちが「生と死」について考え直し、親鸞の哲学、信仰、仏教に興味を持ってもらいたいと思った。