「宇宙論入門」(佐藤勝彦:岩波新書)


宇宙に果てはあるのか?中学時代から、3つ年上の物理の好きな兄がよく言っていた。理科の好きだった私は宇宙のことには小さいときから興味をもっていた。それでも高校の物理の授業はよくさぼって学校のプールに親友と3人で泳ぎにいっていた。そんなわけで理科系工学部を志望し、受験勉強の物理の点数がなかなか上がらずに苦労した。大学時代は理論物理学の授業もとったが、単位はとれたものの、何を勉強したのかほとんど憶えていない。
 社会人になってから、素粒子相対性理論、天文物理などの易しい本を何冊か読んできた。何となく、分かったつもりになってはいるが、シュレディンガーの方程式や、クウォーク、CP対称性の乱れなど、未だによく分からない。何しろ10のマイナス30乗から10のプラス30乗ほどの世界、全く想像できない世界だ。凡人Henryが理解できるのは、せいぜい10のマイナス4乗から10のプラス6乗位までだろうか。分子の大きさから、地球の大きさくらいまでだ。
 この「宇宙論入門」アインシュタインからブレーン宇宙まで、最近のマルチバース、インフレーション宇宙、ビッグクランチから人間原理と宇宙の未来など、比較的わかりやすく書かれている。今までにも、上記のことに触れた本は何冊か読んできたのだが、マクロもミクロも想像ができない数字の桁なので、分かったような気になるものの、なかなか理解ができない。
 北大物理学を卒業した、在職時代の友人に、メールで上記のような感想を送ったら、雑誌の「ニュートン」を読んだらいいと勧められた。「ニュートン」も図書館で時々読んでいるが、これも、ぱらぱらとめくって分かるものではない。物理や宇宙のことは学問の進歩が早いので、新書などでもすぐ内容が古くなってしまうという。その点で、「ニュートン」は最新の研究、話題を、写真や図入りで説明されているのでわかりやすいという。
 宇宙の誕生から生まれた原子によって星が生まれ、生命も生まれた。曼陀羅の三千大千世界は、世界が1,000集まったものが小千世界、小千世界が1,000集まったものが中千世界、中千世界が1,000集まったものが大千世界だという。となると、世界が10の27乗集まった世界(あるいは10の9乗?)ということになるのか。今見えている宇宙はおよそ10の28乗という。
 上記写真はハッブル望遠鏡が捉えたハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールドという、通常は見えない宇宙の一角だが、この中の星のように見えるのはすべて銀河で、1万個以上あるという。とにかく気の遠くなるを通り越した宇宙の広がりにただただ驚く。
 我々は死ぬとまた原子に戻り、あの世(宇宙)に還るのだろうか。そんなことを思いながら宇宙に関する読書もまた愉しであります。