「十牛図入門」(横山紘一)「私の十牛図」(三田誠)

 十牛図(じゅうぎゅうず)は、禅の悟りにいたる道筋を牛を主題とした十枚の絵で表したもの。中国宋代の禅僧、廓庵(かくあん)によるものが有名。
 以下の十枚の図からなる。ここで牛は人の心の象徴とされる。またあるいは、牛を悟り、童子を修行者と見立てる。

■尋牛(じんぎゅう) - 牛を捜そうと志すこと。悟りを探すがどこにいるかわからず途方にくれた姿を表す。
■見跡(けんせき) - 牛の足跡を見出すこと。足跡とは経典や古人の公案の類を意味する。
■見牛(けんぎゅう) - 牛の姿をかいまみること。優れた師に出会い「悟り」が少しばかり見えた状態。
■得牛(とくぎゅう) - 力づくで牛をつかまえること。何とか悟りの実態を得たものの、いまだ自分のものになっていない姿。
■牧牛(ぼくぎゅう) - 牛をてなづけること。悟りを自分のものにするための修行を表す。
■騎牛帰家(きぎゅうきか) - 牛の背に乗り家へむかうこと。悟りがようやく得られて世間に戻る姿。
■忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん) - 家にもどり牛のことも忘れること。悟りは逃げたのではなく修行者の中にあることに気づく。
■人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう) - すべてが忘れさられ、無に帰一すること。悟りを得た修行者も特別な存在ではなく本来の自然な姿に気づく。
■返本還源(へんぽんげんげん) - 原初の自然の美しさがあらわれてくること。悟りとはこのような自然の中にあることを表す。
■入てん垂手(にってんすいしゅ) - まちへ... 悟りを得た修行者(童子から布袋和尚の姿になっている)が街へ出て、別の童子と遊ぶ姿を描き、人を導くことを表す。

 十牛図については、何度か禅関係の書物で読んでいた。十牛図そのものについて解説したものは今回初めて、上記2冊を読んでみた。
 横山紘一さんは唯識の仏教学者で、彼の唯識関係の本は数冊読んでいる。わかりやすい説明をしてくれている。
 三田誠広さんは1948年生まれ、早稲田出身の芥川賞作家だとはじめて知った。原子物理学や遺伝子学などを引用しながらの、十牛図説明はわかりやすく面白かった。
 禅画教室でいつも達磨絵を描いているが、達磨さんばかりだとちょっとマンネリになる。時々布袋さん等も描く。この十牛図も描いてみたいが、十牛図は10枚あって意味をなす。一枚だけではと思うが、入てん垂手(にってんすいしゅ)などを描いてみたいと思っている。