武蔵丘陵森林公園散策

 初秋の森林公園を散策した。我が家から小一時間も走ると、収穫前の一面の稲穂を左右に見ることのできる田園風景の中に入る。道の左右の民家の庭先に咲く、生姜の花の群生なども鑑賞できる。
 一時間半ほどで森林公園に着く。平日で雨もぱらつき、公園内で出会った人は十指に満たない。公園で働く人々の方が多かった。展望レストランは我々だけ。深い緑も、清浄な空気も独り占めの贅沢さ。いつも人の多いところばかり歩いていると、こういう森林の中を静かに歩くのは実に気持ちが安らぐ。
 気温的、街中的にはまだまだ夏だが、季節は確実に秋になっている。女郎花は群生地として栽培されている。桔梗、萩、彼岸花秋桜も咲き始めている。
 初夏に色とりどりの花を楽しませてくれたハナミズキも綺麗な赤い実をつけていた。この時期はあまり派手な花はないが、季節を感じさせてくれるのがうれしい。
 南蛮煙管(キセル)という珍しい花が公園内の道からちょっと脇道に入ったところに咲いていた。Webの「花300」で調べると、葉緑体をもたないため自活できず、 薄(すすき)などの根に寄生し、花の形が、南蛮人(昔のポルトガル人やスペイン人)の用いたパイプの”キセル”の形に似ているところからこの名になった。
なんともユニークなかたちをしている。別名 「煙管草(きせるそう)」 とか「思ひ草」というようだ。以下の如く、万葉集にも歌われている。
 「道のへの 尾花が下の 思ひ草
今更さらに 何をか思はむ」 (万葉集)
そう歌われてみると、確かにこの花、何かを思い悩んでいるようにも見える。
 秋の七草のひとつ藤袴も咲いていた。この藤袴平安時代の女性は、これを干した茎や葉っぱを水につけて髪を洗ったそうだ。また、防虫剤、芳香剤、お茶などにも利用したそうだ。古代、中世では、この藤袴のみならず、色々な草花が、ただ鑑賞するだけでなく、いろいろな場面で人々の生活に関わっていたのだなということが分かった。