「鷲が峰物語:万治の石仏」(新田次郎)


 3月8日に諏訪大社の「万治の石仏」のことをちょっと書いたら、Heroさんが新田次郎の「鷲が峰物語」に万治の石仏が取り上げられているというので、読んでみた。54ページほどの短編だ。新田次郎もこの石仏を見てイースター島のモアイ像をすぐに連想し、闘いに敗れて島を去らなければならなかった、この像を守護神とするイースター島のある部族が日本の古代(縄文時代か)に日本に漂着し、諏訪のタケミナカタなどにも関わりながら江戸時代に至るまで、この石仏にまつわる話を書いている。
 新田次郎は想像力だけで書いたのではなく、海流に関する専門家の話や諏訪の古老の話なども参考にこの話を書いたようだ。
 私は、もちろん、新田次郎ほどの感性豊かな想像力は働かない。新田次郎のこの短編、なるほど、小説家というものはこういう風に物語を作るものかと感心した。また、諏訪にいくことがあれば、もう一度じっくりと万治の石仏に“会って”見たいと思った。