千駄木・本郷・湯島:明治大正昭和の文学関連史跡めぐり

 年に同期会を二、三度お茶の水でやっている。今回はKさんの提案で、文学散歩をしてから懇親会をやろうということになった。
 上野界隈では千駄木・本郷・湯島:明治大正昭和の文学関連史跡がたくさんある。自分でも歩いてみようと思っていたが、実行できないでいた。日暮里駅をスタートして、すぐに「夕焼けだんだん」を降り、谷中銀座を、すぐ
左に曲がり、車一台がやっと通れる道にはいるとすぐ、本授寺という小さい寺がある。ここに、講談師桃川燕雄の墓がある。寄席評論家、安藤鶴夫直木賞をとった「講談本牧亭」という本の中で、桃川燕雄とその周辺の人たちとの濃くて暖かい生きざまが書かれているという。「講談本牧亭」は面白そうなので、読んでみたくなった。
 今回はKさんが文学者ゆかりの地の資料を集め整理しプリントしたものを仲間に配ってくれた。地図、写真入りの17ページの大作だ。それらを見ながら歩いた。
 山岡鉄舟が建立したという谷中の全生庵には三遊亭円朝墓所もある。なぜか、この墓所の中に金ぴかの観音菩薩像が建っている。何とも不釣り合いというか、鉄舟、円朝のイメージには合わない。
 鴎外旧居の書斎からはかって東京湾が望めたという観嘲楼、夏目漱石旧居、東京大学農学部の構内にある朱舜水の記念碑などを見て回った。浪人時代、大学時代に読んだ漱石の小説などを思い出しながら雨の降り出した、次のゆかりの地をめぐった。
 宮沢賢治旧居、金田一京助、京介の世話にたびたびなった石川啄木の旧居、下宿先、徳田秋声坪内逍遙の旧居や、樋口一葉の旧居、一葉家族が使っていたという井戸はまだ残っている。一葉がたびたび通ったという「伊勢屋」という質屋の建物はまだ保存されている。

 これらのゆかりの地や建物には文京区や東京都の文化委員会の丁寧な説明看板が取り付けられていて勉強になる。
 資料を作って案内をしてくれたKさんは東大を出たので、この文京区一帯は曾遊(曾学とは言わんかな?)の地、昔から詳しいのだろうが、退職した今は、ボランティアのクラブで都内の名所旧跡案内をしているという。資料準備や下調べも大変なことだと思う。金にはならないだろうが、良いことをされていると思う。
 三四郎池や安田講堂なども見たかったが、同期会の始まり時間になったので文学散歩を終えた。文京区、台東区には、まだまだ文学者ゆかりの史蹟、名所がたくさんある。又の機会に回ってみたい。
 同期の仲間も時間の余裕がある。夜、ただ宴会をするよりも、昼過ぎからこういう類の散策をしてからだと、刺激にもなり、会話の幅が広がって楽しい。それに1万数千歩歩いてからのビールは格別である。
 次回も同じような企画でやりたいものだ。