ネオテニーとプロジェネシス

 大阪の友人 M.Sさんが、ネオテニーとプロジェネシスについて詳しい説明のメールをくれた。私のブログはWebからの引用でどうもすっきりしなかったので、彼のメールで理解が深まった。
 それにしても。MSさん毎度の事ながら、脳に関することだけでなく、生物、医学、科学などどの分野にも造詣が深く、いつも恐れ入っている。
そういえば、昔一度、彼の包丁さばきでJazz蘊蓄を聞きながら魚料理をご馳走になったこともあった。
 一芸にひいずるもの、多芸にひいずと言うことか
以下は彼の説明をご紹介させていただきます。
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 ネオテニーは通常幼形成熟と訳され、進化学でよく使われる言葉です。基本的には、進化において祖先が成熟(生殖能力を獲得すること)する際に体形変化を伴っていた動物が、分岐後、体形の一部またはすべてが幼形のまま成熟してしまう進化を意味します。これを細分化して
1.ネオテニー:成熟する際に、体の一部またはすべてが幼形のまま成熟する。
2.プロジェネシス:成熟する際に体形変化がある時点でそっくり停滞したまま成熟する。
3.ディスプレイスメント:個体発生において胎児期のある部位の発達開始時期に遅れが生じること。と分けて考える人もいますが、通常は1.も2.もネオテニーといいます。
 シロウオの場合は明らかに2ですので、ネオトニーといってもプロジェネシスといってもいいのですが、シラウオは小さいとは言っても立派に祖先の持つとがった口も各種の鰭も成熟するまでには発達しているのですから1.2.3.いずれにも該当しないと見たほうが私はいいと思います。もちろんこうした生物学用語はあいまいに使われるケースが多く、シラウオの場合を絶対にネオテニーではないと言い切れるものではありませんが。
 因みに、1.と3.の例としては、ヒトの進化で次の事例がよく紹介されます。1.のネオテニーについて出てくるのは顎骨の形状です。祖先は成熟前に十分大きく発達して現在のチンパンジーの親のようになっていたはずなのですが、ヒトはその成長がストップして、チンパンジーで言えば子供のままの形にとどまっているのです。3.について出てくるのは、頭(脳)についてです。ヒトはここが異常に発達してきましたので、胎児期にここを完成させてから出産するとなると母体の危険が大きくなりすぎます。結果としては、胎児期の脳の発達の遅れた子供を持った種だけが進化の世界で生き延びてきたというわけです。≪小さく生んで大きく育てるも同じ意味に近いですね≫。こうした進化をディスプレイスメントというわけです。
 ところで私はシロウオの踊りのほうが遥かに好きですが、今は高すぎてほとんど口にできない状況にあります。