二冊の「アマテラスの誕生」(溝口睦子:岩波新書)(筑紫 申真:講談社学術文庫)

 お伊勢詣りをする前に、二冊の「アマテラスの誕生」という本を読んだ。
 溝口睦子さんのものは、
戦前の日本で、有史以来の「国家神」「皇祖神」として奉じられた女神「アマテラス」であるが、ヤマト王権の時代に国家神とされたのは、実は今やほとんど知る人のない太陽神「タカミムスヒ」だった。この交代劇はなぜ起こったのか、また、古代天皇制に意味するものは何か。広く北方ユーラシアとの関係を視野に、なぜ、アマテラスが誕生してきたのかを書いている。
 また、どのように神話が誕生したか、どのように語り継がれ、どのように書きかえられたか、日本書紀古事記の編纂の違いなどが丁寧に書かれている。
  筑紫申真さんの方は著者と出版社からの紹介によると、「皇祖神と伊勢神宮は天武・持統両帝によって創出された。天皇制の宗教的根源の成立過程にせまる。
 古代、各地方にあまねく存在していた太陽神は、壬申の乱を契機に天皇家の祖神へと変貌した。古代天皇制の理論的・宗教的背景となる伊勢神宮・アマテラス・記紀神話。その成立過程を民俗学と日本神話研究の成果を用いてダイナミックに描き出す。律令国家の形成にむかう激動の7世紀末、大和と伊勢を舞台に展開した、血脈をめぐる壮大なドラマの全貌。」という。
 伊勢神宮がどのような経緯で今日のように変遷してきたのが分かり面白かった。
 記紀神話の世界は学会でも解釈が色々と分かれている。素人の私がとやかく言えることではない。しかし、伊勢神宮のみならず、出雲大社諏訪大社他、全国の八百万の神々を祀った神社が、古代からの日本人の原始信仰、自然信仰が、時の為政者によって多少形が変えられたとはいえ、長い時間の中で日本人に守られてきたことは事実であり、かつ、素晴らしいことだと思う。
 また、伊勢神宮は二十年毎の式年遷宮持統天皇の御代から61回1300年も続いてきたということは、世界でも例を見ない、凄いことだと思う。
 近年はパワースポットということで若い人たちも多く訪れているそうだ。「なにごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさになみだこぼるる」とうたった西行、参拝して、神宮の神聖なる空間を賛嘆した、アンドレ・マルローなど、皆、伊勢神宮の気韻に感動している。
 ビートたけしも近年訪れて、、あそこに行くと、家内安全とか、商売繁盛などというちゃちな神頼みをするのが恥ずかしくなると語っていた。やはり、才ある人は何か神聖なものを感じ取るのだろう。
 凡人Henryは今回のお伊勢詣り、大勢で参拝したことと、参拝者が多すぎて、神聖な気分にひたることができなかった。早朝とか、冬の雪の降る日とかの方が良いかもしれないと思った。
 ともかくも、この2冊の「アマテラスの誕生」、アマテラスとは何か、伊勢神宮とは何かを勉強する上で参考になると思う。ご関心のある方はご一読をお勧めします。