「ぶらりミクロ散歩(電子顕微鏡で覗く世界)」(田中敬一:岩波新書)

著者の田中敬一という方、鳥取大学の名誉教授で専攻は顕微解剖学とのこと。定年後に自宅に電子顕微鏡を設置し、気ままに見たいと思ったものを覗いている。宇宙のマクロの世界も、ミクロの世界も、通常の人間の目では見られない世界を見せてくれて楽しい。中学、高校のときは光学顕微鏡で見る世界だけでも胸躍らせた時期があった。自分の少年時代には買えなかった顕微鏡を子供のために買ったのだが、興味を示さぬまま押しいれに入ったままになった。
 この本の著者、思いつくまま色々なものの顕微鏡写真を赤瀬川源平の「老人とカメラ」のごとく、楽しいコメントをつけて説明してくれる。
 結石の画像などは驚嘆する。私の結石はルーペで見ただけでかわいいものだったが、この著者の結石は恐ろしい形相をしている。私の結石も顕微鏡で見たら同じようになっているのかもしれない。



妙齢友人から、ブログに結石の写真を掲載するのは如何なものかと、ご叱責をいただいたが、何事も好奇心は強く持つに越したことはないと、この本から転載させていただきました。
 紫蘇の葉は裏側に香り袋があり、茗荷は香り袋というものがある。バジル、ミントなどのハーブは葉の両面に香り袋ある。それも大きいものと小さいものがあるという。紫蘇が淡泊な日本料理に合い、ハーブは西洋料理にというのも納得する。茗荷の香り袋は葉の表面にはなく細胞の中にあるという。だから、茗荷は細かく刻むか、強く噛むことではじめて香りが出ることになる。顕微鏡の画像で説明されるとより納得する。
  その他、スイカ、えびの視細胞、T2バクテリオファージ、エイズウィルスや植物の葉や花粉の微細写真などどの画像も興味深い。
 文章も軽い随筆風で頭やすめになった。