「アブラクサスの祭」(玄侑宗久:新潮文庫)

 アブラクサスとは何だろう? 小説の終わりに近いところで、「神様と悪魔を兼ね備えた存在がアブラクサスであり、ナム・アブラクサスとはいずれにしてもその聖なる存在を呼びだす呪文なのだ」という説明があったが分かるようで分からない。
 Webで検索したら、アブラクサスとは、神、太陽、天使、デーモンを象徴する古代の神霊の名前で、グノーシス主義の文献に、アイオーンの一人としてガマリエルやサブロとともに多く登場し、選ばれし者を天国に連れて行く存在である。
 また、アブラクサスはペルシア起源のミトラ神信仰とも関係があったが、この宗教はローマにおいて、はじめの400年間、キリスト教の最大の対抗勢力であった。グノーシス主義のように、ミトラ教は複雑な占星術と数秘学を特徴としていた。アブラクサスは物質界を創造し、悪魔的な性質を持つ旧約聖書の神(実際は創造された存在で、高位のアイオーンであるソフィアの息子)に同化していった。中世には、アブラクサスは正統派のキリスト教によってデーモンとみなされ、崇拝者は異端とされた。
 前置きが長くなりました。どんな小説家というと、若い頃はロック・ミュージシャンだったという、分裂症まじりの躁鬱病の浄念という僧侶の物語。
 会社勤めの時に何人かの鬱病など、心の病にかかった部下を見てきた。坊さんが鬱病になったらどうなるのだろうかという関心があった。しかし、自分が鬱病になった経験はないので、玄侑宗久がこの本で何をいいたかったのかは良く理解できていない。
 この小説スネオヘアーというミュージシャンが主演で映画化されているという。以下のURLで映画の内容が分かります。映画の方が音楽もありで、分かりやすそうだ。残念ながら近場の映画館では見られない。是非見てみたいと思う。
http://www.aburakusasu.com/index.html