「いいかげんがいい」「がんばらない」(鎌田實)

 いいかげんなHenryが、題名につられて読んだ。鎌田さんのことはテレビなどで知ってはいたが、「がんばらない」などの本も読んでいなかった。どのような経緯で医学を専攻し、諏訪中央病院の院長をされて、この病院をどのように立て直し、改革していったかについては、この本を読むまで知らなかった。
 この“いいかげん”、無責任に、適当に生きろ、irresponsible
ということでない。「良い加減」が大事なのだ。バランス感覚を持って、中庸を保ちということでもあるのだろう。
 病院での治療活動だけではなく、患者の立場に立っての医療とはどうあるべきか。死を間近に迎える患者へのタームナルなるはどうあるべきか。などなど、患者たちと対話、対応の仕方は、しみじみと、また、ほのぼのとさせる話が多い。思わずジーンとくる話も多かった。
 加藤登紀子の解説も味わい深かった。

 NPOの活動で、チェルノブイリの医療支援活動をしたり、浅間温泉、神宮寺の若手住職、高橋卓志[「寺よ変われ」(岩波新書)の著者]が主催している「尋常浅間学校」の校医などをして、地域活動も活発に行って来ている。
 3.11以後は東北の被災者への医療支援も行っている。
「がんばらない」も同じような内容が語られているが、病人や傷ついた人、世の中の弱者に対して、「がんばれ!」と声をかけるのではなく、「よくがんばったね」が大事だという。
 人はみな老いて、いずれ死を迎える。どんな病気で、どんな死に方をするのかわからないが、この諏訪中央病院の様な所で診療を受け、出来るものなら、家族に迷惑をかけずに在宅死できたらばと思う。
 鎌田さんの2冊の本を読んで、日本の医療のありかたと、自分の行く末を考えさせられた。