「ダライ・ラマ 科学への旅 原子の中の宇宙」

 

ダライ・ラマ科学への旅 (サンガ新書)

ダライ・ラマ科学への旅 (サンガ新書)

ケネス・タナカの「目覚める宗教」の中で紹介されていた、「ダライ・ラマ 科学への旅 原子の中の宇宙」を読んだ。ダライラマについては今までに一、二冊読んだことがあるがそれほど深い感銘を受けることはなかった。ダライラマ14世が選ばれる経緯をだいぶ前にテレビで見たことがあった。輪廻転生の考え方は理解できるが、現代にこのような考えで、チベット亡命政府の長、チベット仏教を代表する最高指導者を選ぶということがどうもすっきりと納得できなかった。
 選ばれた経緯はともかく、ダライラマは1989年にノーベル平和賞を受賞し、77歳で世界中で活動している偉大なる仏教者であることは確かである。
 「目覚める宗教」の中で紹介されているように、2005年にアメリカワシントンで行われた神経科学学会に基調講演者として招待され、1万4,000人が聴きに行ったという。アメリカでのダライラマの人気がうかがえる。
 量子物理学や宇宙論から生命科学に至るまで、現代科学の世界観を仏教の生命観や倫理観を通じて検証し、ときに科学と仏教の統合を試みながら、地球の未来を探る。世界中の著名な科学者との対話や、仏教に関しても単にチベット仏教だけでなく、大乗仏教、南伝上座部仏教唯識、華厳などの仏教哲学、仏教心理学と、現代科学の遺伝子工学生命科学や認識論などを引用、対比しながら語っている。
 私もダライラマには及びもつかぬが、同じように、仏教各派の考え方、また宇宙論、量子物理学、遺伝子工学etc.興味関心があり関連の本は読んできた。小生の頭ではまだまだ理解できないことが多いが、最近では、科学と仏教、両者の言っていることがぼんやりと頭の中で像を結びつつあるように感じてきている。
 ダライラマもこの本の中でかなり謙遜しているが、現代最先端の科学に対してかなり深い造詣を持っている事を知った。今後の科学の進歩が人間の意識の問題をどこまで解明していけるのか。また、仏教のこれからの役目は、仏教と科学との継続的対話の問題など、いろいろと、考えさせられ勉強になった。
 ダライラマには今後さらなる活躍を期待するとともに、チベットの政治的問題の解決を願わずにはいられない。