南直哉講演会

 達磨絵教室の仲間のHさんからのご案内で、大宮ソニックシティーでの南直哉さんの講演と、奈良県教恩寺の若い女性住職でシンガーソングライターのやなせななさんの歌とお話を聞きに行った。
 私は6,7年前から南直哉さんの本を読んでいた。ここ数箇月、家人が南直哉さんに急傾倒し、私がまだ読んでいないものも含めて図書館で借りて読んでいた。購入を考えていた家人が、私の本棚に既に数冊あったのでびっくり、自分の本棚にさっさと引越しさせた。「捨てろ、捨てろ」と言われるヘンリーの蔵書もたまには喜ばれる。思いがけなくも地元でしかも無料で講演を聴けると言うので喜んで行ってきた。


 このお二人の講演会、主催は曹洞宗の全国に9つある強化センターのうちの関東強化センターというところ。やなせななさんは龍谷大学を卒業、浄土真宗の寺を継いだという。宗派は違うがこの講演会に呼ばれたそうだ。家人は、最近見たNHKテレビで彼女のことを既に知っていた。「貴方のために録画しておいたのに、野球、ボクシングとちっとも見ようとしないから消去した」と言われてしまった。深みのあるいい声だった。東北の震災地を多く回り、コンサートや法話の講演をされている。被災地の方々との対話など身につまされ、自然と涙が出てきた。
 南直哉さんは今まで本の中でしか知らず、肉声を聴いたことはなかった。本や玄侑宗久さんとの対談などで想像するに、もっと繊細で難しい話を硬く話す方なのかと想像していた。ところが、出て来るなり、いきなり東京弁っぽく、落語家がまくらを話す調子で始めたのには予想を裏切られた。
 ジョークを入れながらゆったりとしたテンポで、恐山で会ったいろいろな人たちとの話、「恐山に死者はいる」、「死んでいる人間の方が大きな存在であり、大きな意味を持つ」「人間は誰かを通じてしか自分を認識できない」「自分を自分にしてくれた人を大事にしなくてはいけない」「誰かを許す。そういう、許す自分を許せるか」etc.どの言葉も恐山を訪れた参拝者の話をもとに、絶妙な間合いをあけて語りかける。はらわたに沁み入る話だった。
 最近のなまじの落語家や芸人たちよりも、ずっと素晴らしい ”噺家”ではないかと思った。また、こういう話は本ではなく、やはり講演、面授、face to faceで聞くに限る。
 久しぶりに、心洗われる時を過ごすことができた。感謝、合掌!