<御宿 月の沙漠>

 御宿の海岸に月の沙漠の像が立っているとは知らなかった。50数年前にこの海岸でテントを張った時にはなかったのではなかろうか。Wikipediaで調べてみると、月の沙漠(つきのさばく)は、大正から昭和初期に叙情的な挿絵画家として人気を博した加藤まさをが、講談社発行の雑誌『少女倶楽部』1923年(大正12年)3月号に発表した、詩と挿画からなる作品である。
これに、当時まだ若手の作曲家であった佐々木すぐるが曲を付けたことで、童謡としての「月の沙漠」が生まれたという。

 てっきり沙漠の中の風景をイメージしたものかと思っていたが、学生時代に結核を患った加藤が、保養のために訪れた御宿海岸の風景から発想したという。また、海岸の風景がモチーフになっており、海岸の砂はみずみずしいことから、「砂漠」ではなく「沙漠」としている。「沙」には「すなはま」の意味があるということも今回知った。

月の沙漠記念館のある千葉県夷隅郡御宿町では、毎日朝昼夕の3回、防災行政無線からこの音楽が流れる。友人のS君宅でBBQをしている最中にも音楽が流れてきた。なかなか乙なことをやるもんだ。

 この御宿の海岸には、和歌山県沖のトルコの船の難破と同様の話があった。
慶長14(1609)年9月30日未明、メキシコへ航海中のサン・フランシスコ号(乗組員373名)が嵐によって御宿沖で座礁。命からがら泳ぎ着いたドン・ロドリゴ総督をはじめ乗組員317人を村人が総出で救助し、着物や食料を提供しました。ドン・ロドリゴ一行が漂着した岩和田海岸近くの高台に日本とスペイン、メキシコの交流の発祥として記念之碑が建立されている。

 長いこと千葉県人で、房総半島は曾遊の地であったのだが、この年まで知らなかった。
今回は生憎と雨が強く海岸や記念館を散策することが出来なかったので、次に行く時はゆっくりと散策してみたいと思った。

 <蛇足>昔、FMのジャズ放送で「月の砂漠」(Moonlit Desert)を聞いたことがある。
ケニー・ドリュー・トリオの素晴らしい演奏でテープに録音しておいて何度か聞いたことがある。ニールス・ペデルセンのベースが印象的だった。ついでに、この曲名は”沙漠”ではなく、”砂漠”であった。

 Moonlitのlitはlightの過去分詞だが、moonlitで月光に照らされたという意味の形容詞になっている。desertのアクセントは前にあるなど、語学には多少うるさい友人同士、そんな英語の話も飲みながらの会話に出てきた。
 帰宅してから辞書を調べたら、moonlitには ”<密造酒等で>酔って”という意味もあることを知った。”密造酒”ではなかったが、ビール、バーボン、焼酎などをいただいて、皆いい気持ちに酔わせていただきました。

ムーンリット・デザート(月の砂漠)(紙ジャケット仕様)

ムーンリット・デザート(月の砂漠)(紙ジャケット仕様)