読み初め「生命とリズム」(三木成夫:河出書房新社)

 三木成夫の本は「胎児の世界」「内臓とこころ」を昨年読んだ。「生命とリズム」は著者が残したエッセイ、論文、講演をあますところなく収録。われわれ人間はどこから生まれ、どこへゆくのか―「三木生命学」のエッセンスにして最後の書だという。
 今年の読み初めは昨年12月に発売された「生命とリズム」なかなか読みごたえのある面白い本で考えさせられるところ大であった。
 三木成夫のことは、茂木健一郎の「脳と仮想」を読んで知り、「胎児の世界」を読んだ。なかなか衝撃的な内容だった。(その時の感想は2013-3-31にブログに書きましたのでご照覧下さい。)
「イッキ飲み」や「朝寝坊」「ツボ」「お喋り」に対する宇宙レベルのアプローチから、「生命形態学」の原点である論考、そして感動の講演「胎児の世界と“いのちの波”」まで、色々な場所での講演記録が書かれている。
 三億年前、動物が古生代の終りに上陸を敢行してその時に呼吸の期間にものすごい一大革命が起こった。つまり、鰓呼吸から、肺呼吸に変った。そして肺の表面には植物性の筋肉が完全になくなった。気管支の抹消の方にわずかな植物性の筋肉が残っているだけという。
 鰓呼吸から肺呼吸へ人類がたどってきた進化の歴史など、ゲーテの形態学を踏まえて、人体解剖学の見地から、生命のリズム、人間のこころなど、独自の視点から分析している。
 医学のこと、解剖学のことなど門外漢の私にとって、新鮮な驚きを感じた好著であった。
 

因みに本の表紙の画像は、現代の陸上動物の祖先が1億年かけて長い海の生活を捨てて上陸を敢行し、その1億年のドラマを人間の胎児は、受胎後32日から38日のわずか7日間で、魚類から両生類、爬虫類から哺乳類へと、その面影を残してめまぐるしく変化しているという、驚きの画像です。