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「知的唯仏論」(宮崎哲弥・呉智英)

 宮崎哲弥という方はTVのコメンテーターとは知っていたが、これほど仏教に造詣が深いとは知らなかった。しかも、龍樹の中観派を自称し、中論に大きな影響を受けたとは知らなかった。
 いわゆる、仏教学者、僧侶が書くものとだいぶ趣が異なり、蘊蓄屋のHenryとしては、仏教哲学を語り合う二人の対談が面白かった。
 
 この本の中で紹介されていた、仏教教理問答も読んでみた。現代版教相判釈といった内容だ。
 白川密成、釈徹宗、勝本華蓮、南直裁、林田康順との対談集だ。それぞれ、真言宗、浄土真宗、天台宗曹洞宗、浄土宗の僧侶だが、世襲の僧侶とは限らない。釈徹宗、南直裁お二人の本は読んでいるので対談の内容もよく理解できた。
 
 勝本華蓮さんはもともとはデザインの仕事に携わり、28歳で独立し会社を経営していたが、仏教に出会い出家をして、インド仏教学やパーリー学などを学んできたそうだ。尼僧の方との対談を読むのは初めてだったがなかなか刺激的な対談だった。
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 ▶以下はamazonでの紹介
 
仏教とは「釈迦の説いた思想」であり即ち「唯仏論」である――。仏教を高く評価する非信者、呉智英仏教徒を自認するが宗派には属さない、宮崎哲弥。わが国を代表するふたりの論客が縦横無尽に語り合う。宗教とマンガ。日本仏教の特質。そして、輪廻とは、神秘体験とは、“私”とは、愛とは? ありきたりな通俗書では満足できないあなたに贈る知的興奮に満ちたセッション!
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 ▶amazonのレビューから
 
本書は、対談という形式を取っているけれど、そこで展開される宮崎氏と呉氏との間で交わされる議論のレベルは、その用語も含めてとても高度なものである。歴史、宗教学は言うに及ばず、宗教史、仏教史、仏教学、本邦の仏教各宗門の仏教解釈だけでなく、キリスト教学や西欧思想史というバックグラウンドがないと、本書で交わされる議論にはついていけないと思う。たとえば、本書の題名ひとつをとってみても、「唯仏論」とはもちろん「唯物論」のモジリではあるけれども、一見、語呂合わせのように見えてそれは単なる語呂合わせなんかでは決してない。マルクスヘーゲル弁証法ヤスパースを始めとする実存主義構造主義レヴィナス論・・・と展開されていく「実存」対「外部関係性」における両氏の議論の弁証法的展開から発想されたものであることが、本書を読むとわかる。宗門には属さないけれど自らを仏教者であると定義し仏教に関して該博な知識を有する宮崎氏に対して、仏教書を著しながらも非仏教者であるという呉氏が仏教や宗教に対する疑問を提起するという形式で進む会話は、まさに「仏教的に実存を解釈したい」という宮崎氏と、それに理解を示しつつも「仏教の外部」にいる呉氏との知的バトルの側面がある・・・冒頭に「本書は難しい」と書いたけれど、宗教のことがわからないわたしであっても、宮崎氏の博覧強記ぶりとそれに負けない呉氏との間の知的バトルは、じゅうぶんに楽しめるものであったと言いたい。そして、「自分の知らない分野をもっと勉強したくなる」と思わせてくれる効果も・・・。