養老さんの本は、壁シリーズが“馬鹿”売れする前に「唯脳論」など何冊か読んでいた。「バカの壁」は読んだ時はまあまあだったけど今思い出すとあまり印象に残っていない。
馬鹿シリーズがベストセラーになって、ちょっと安直に次から次へと書きすぎではないかと敬遠していた。この本は題名が気にかかった。養老さんがどういう無思想を発見したのだろうか読んでみた。「バカの壁」「死の壁」よりははるかに中身が濃いと思う。
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日本人は無宗教・無思想・無哲学だという。その一方で「世間」という思想を持っている。さらに、無思想という思想、無宗教という宗教を持っているという。
無宗教という宗教は、つまるところ「無」宗教=仏教ではないかとも述べ、般若心経にも言及しているところはユニークだ。
また、「思想なんてものはない」というのは、思想における「ゼロ」の発見であり、ゼロとは何もない状態をあらわすとともに、一つの数字であり、数字の起点でもある。そこから、養老さんは、「思想がない」というのもひとつの思想のありかたという。
この思想は「世間教」といってもいい、イザヤ・ベンダサン(山本七平)が「日本人とユダヤ人」の中で“日本教”と言っているものと同じと言っている。
無思想を日本独自の思想としてその長所、短所を認識していこうという“思想”には共感を感じる。しかし、日本人にはこの「無思想という思想」が受け入れられるかもしれないが、西欧社会に分かってもらうのはかなり難しいのではないだろうか。
その辺のところを考えると、日本流の新しい仏教と神道(アニミズム、混こう主義の)をミックスした(習合した)Engaged Budhismを打ち出していく必要があると考える。
21世紀を救う、新しい覚者(Budha)の出現を期待したい。
- 作者: 養老孟司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/12
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