筆記具雑考ペン軸あれこれ(1)

<軸の材質>

 ペン軸の材質は、エボナイト、18金、14金、シルバー、スターリングシルバー、プラスチック、木など色々ある。万年筆といえばエボナイトとまず浮かぶ。ところで、エボナイト(ebonite)ってなんだろう。あらためて考えたらどういうものなのかわからない。調べてみると化学素材ではなくゴムの一形態との事。 「硬く光沢をもったゴムで、外観が黒檀(ebony)に似ていることからエボナイトと呼ばれる。開発者はチャールズ・グッドイヤーであり、ゴムを長時間加硫して硬化させたものである。含硫率は 30%?40% に及ぶ。」という説明があったけど、プラスチックと何がどう違うのかまではわからなかった。ペン軸はある程度の重さも欲しい。指の触感はあまり変わらないけどエボナイトの方が比重が大きく少し重いのではないだろうか。ペン軸もあまり軽いのも字が浮くようで落ち着かない。
 金属軸はアルミ軸は言うに及ばずだけど、なぜかステンレスより18金,14金やシルバー軸の方が指の感触の落ち着きがいい。皆さんのご感想はどうじゃろか。顕微鏡的に見た金属の表面と指の表面との接触面の相性の問題だろうか。木の軸の感触も捨てがたい。
<軸の重心と重さ>
 書きごこちの良いペン軸は、重心が全長の2/5程の所にあるものがバランスもよく良いようだ。太い軸径で金属製のものは見た目は豪華だが重すぎてスピードある筆記や長時間の筆記には向かない。
クロスの金属製ボールペン(普及タイプ)は伝統的スタイル(デザイン)だが、西欧人が使うにしては軸径が細い。しかし、軸径が細いことで金属性ながら重くなりすぎずにバランスを保っていると思う。
 シャープペンシルの最近のものでは、PilotのS-seriesのS-10②や、このシリーズの木目軸①が総合的にバランスがいいと思う。
 
シャープペンシルの芯出し機能>
 シャープペンシルでは、ちょっと高い製図用とうたわれて売られているものに、重心、重さ共にバランスのいいものがある。私の愛用は20数年前に購入した三菱Hi-uni0.5だ。このシャープは画像<5>のAの部分を人差し指で動かすと芯が出てくる。当時の価格で3,000円したから、この手のシャープとすると高級品に属す。このシャープは実用的な総合点で自分の持ち物の中ではベスト1だ。最近の文房具売り場で見当たらないので絶版になっているかもしれない。
 シャープは芯出しにノック式、回転式、上下振動式、芯出し不要のもの、指で軸の先端部の芯出しボタンを押すものなど色々ある。ノック式が一番落ち着きがいいけれど、書いている途中で芯出しが必要になり、持ち替えてのノックは、筆記、思考が僅かの間なのだが中断されるのが気になる。そういうことを考えるとわが愛用のこのシャープ<5>は指を持ちかえなくても芯出しができて使い勝手がいい。100円程度のものでも軸の先端部を人差し指で押すと芯出しができるものがあるが、重量感とバランスが問題だ。
◆シャープに限らないが、筆記具の大事な要素に、もう一つもった指の位置と文字を書く先端部分の位置との感覚の問題がある。これも人によって好みがある。かなり長いものを好む人がいるが、私は短目が好きだ。そんなニーズをくみとってか、<9>OHTOのPROMECHAはBの芯出しの先端部の長さを好みに応じて可変できる。これもなかなかアイディアもので楽しい。

 誰に何をどの紙にどのように書くか、それが問題だ。ただ書ければいいじゃないかという無粋なことはしたくない。いろいろなTPOで書くことを楽しみ、こだわりたい。だから筆記具もペン軸もその時々で変えたいのです。
 筆記具は時計やジャケットと同じようなところがあって、cheap chicも楽しいけど、ただ実用的なだけで、数も一つ二つしか持っていないのは寂しい。ちょっとしゃれっ気も欲しい。そこでやはりモンブランとかペリカン、クロスなどを使いたくなるのだ。ブランドにこだわるわけではないけれど、永年の伝統のある筆記具メーカーの製品にはデザイン、書き味、重量バランスなど工夫があって夫々に味がある。あとは好みの問題ですね。
 次は、筆記具雑考の終章として、万年筆について書いてみたい。