特別展『仏像 一木にこめられた祈り』


 東京国立博物館 平成館で開催されている、特別展『仏像 一木にこめられた祈り』を見に行った。
 寺外初公開の滋賀・向源寺(こうげんじ)の国宝十一面観音菩薩立像(渡岸寺(どうがんじ)観音堂所在)ほか、奈良・平安仏から江戸時代の円空(えんくう)・木喰(もくじき)まで、一木彫(いちぼくちょう)の名品、国宝4体、重要文化財41体を含む146体が展示されていた。
 滋賀の向源寺の十一面観音は、白洲正子が著書「十一面観音巡礼」の中で紹介、絶賛しており、一度機会があれば見たいと思っていた。滋賀の向源寺ではなかなかいけそうもない。また、先日、ANZさんから「美の壷」という番組を教えられ、その番組の中で、円空、木喰の一木彫りが紹介されていた。そんなわけで、この向源寺の十一面観音と円空仏、木喰仏はめったに見られることではないと出かけたわけです。
 平日にもかかわらず、朝早くからオジン、オバンがぞろぞろと博物館に向かう。上野の森では「ダリ展」や「日展」も開催されている。いつもの上野より圧倒的に中高年が多いようだ。団塊世代の定年で中高年層の間でこういった芸術鑑賞をする人が増えたのだろうか。向源寺(こうげんじ)の国宝十一面観音菩薩立像はこの展示会のメインステージに、瞑想するかのような慈悲深い表情、ふくよかな肉身、腰を捻って立つすらりとした肢体を見せている。観音菩薩というのはもともと男性なのだが、この菩薩を見ているとどうしても女性にしか見えない。白洲正子が言うところの、まさに“両性具有の美”を感じる。他を圧して、観仏する人々のハートを捉えていた。
 また、円空仏の一木彫は、大地に根を張った生命力あふれる木から造られたという実感と、円空の息吹を感じさせられた。なぜか、棟方志功の荒々しい版画絵と印象がダブった。
 木喰仏は円空仏とは全く味わいが異なるがどの仏を見ても丸く丸く笑みをたたえている表情には心和ませられた。
 

十一面観音巡礼 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

十一面観音巡礼 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)