「植物知識」牧野富太郎

 物心ついた時には庭のない商店に育ち。生物学の嫌いな理数人間(だった)のHenryにとって植物の世界は50過ぎになるまでほとんど蚊帳の外の世界だった。50歳を過ぎてLAから帰国し、神戸に住んで近くの公園や六甲山、関西の神社仏閣を歩くようになってから、少しずつ植物に興味が湧き、関心を持つようになった。
 以前にも紹介しましたが、何冊かの植物関係の本を読んで、植物の智慧、美しさ、見事さを教えられた。
 牧野富太郎さんという方、植物の好きな方ならご存知で、「日本植物図鑑」などをご覧になっているのでしょう。小生、数年前にやっと知った。以前からこの本を読んでみたいと思っていたが、はるか昔?の学者ということと、植物が写真ではなく絵のみなので、なんとなく読む機会を逸していた。
 牧野富太郎さんは1862年(文久2年)生まれで95歳の長寿を全うした世界的植物分類学者、新種1,000種、新変種1,500種以上の日本植物名を命名しているという。
 この本、単に植物のことを教えてくれるだけでなく、紫陽花や菫と書くのは間違いと説明してくれる。菫(きん)とは中国でスミレとは全く異なるもので畑に作る蔬菜とのこと。また、サクラソウのことも詳しく説明していて“田島が原”についてもふれている。このサクラソウの種名がSieboldiといい、シーボルトが命名したようだ。江戸後期に日本に来たドイツ人医師くらいの事はうろ覚えで知っていたが、日本の動植物を研究し、日本の学者を教えたことまでは知らなかった。
 花にまつわる、万葉集の歌などにも触れながら、植物知識のない素人にやさしく教えてくれる。122ページの薄い本ですので、お花好き、植物好きの方はもちろんのこと、植物に(現在は)関心のない方にも是非お勧めの本です。
 以下はこの本の牧野さんの「あとがき」から添付しました。

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 私は、草木に愛を持つことによって、人間愛を養うことができる、と確信して疑わぬのである。もしも私が日蓮ほどの偉物であったなら、きっと私は草木を本尊とする宗教を樹立してみせることができると思っている。自然の宗教!その本尊は植物。なんら儒教、仏教と異なるところはない。もし諸君が本書を読んで、いささかでも植物趣味を感ぜられ、且つあわせて植物知識を得られたならば、筆者は大いに満足するところである。(「あとがき」より)

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 なるほど!「日本教」はある意味で「植物教」でもあるかなと思った。

植物知識 (講談社学術文庫)

植物知識 (講談社学術文庫)