「演歌のススメ」(藍川由美)

 この本、題名が悪い、いわゆる演歌好きのマイクを離さないタイプが手にとるかもしれないが、J・Pop好きの若者は先ず読まないだろう。Henryはいいメロディーなら演歌も大好きである。新書でこの題名で、何を書いているのだろうと5年前にこの本を読んだ。 なんと、東京芸大でのソプラノ歌手の、童謡、演歌という日本の音楽的伝統を分析・評価した音楽論となっている。
 野口雨情の詩や、その詩に曲をつけた、本居長世中山晋平の童謡や、演歌の先駆けになった歌の作曲に関る努力にも目が開かされた。古賀政男の歌謡曲、演歌(いわゆる古賀メロディー)など、当時の名曲が、日本の音楽的伝統を基盤に新しい西洋音楽至上主義と戦い、ジプシー音楽や世界各国の音楽を研究しての結果と知って、改めて、日本の作曲家を素晴らしいと思った。
 今回、野口雨情記念館に行ったきっかけであらためて読み直した。
 
 最近は、音楽に対する感受性も遺伝子の中に組み込まれているように思うようになった。Jazz好きのHenryの中にも日本人としての音楽的伝統の遺伝子が書き込まれているようだ。Jazzのブルースやケルト音楽に共感を覚えるのは、日本の音階と共通する音楽的構造があるからだろう。
 最近は、歳のせいか、どちらかというと、三味線の音を聞かせる、新内、都都逸長唄などの類が、しみじみと腹にしみる。しまいこまれた遺伝子が呼び覚まされているのだろうか。

 話は戻りますが「演歌のススメ」は、日本の近代音楽史、明治・大正・昭和の学校音楽教育、童謡、歌謡曲、演歌の世界など色々な勉強をさせてくれる、お勧めの一冊です。

                                                                                                                      • -

 以下は、カバーに書かれた紹介文です。
わが国には無批判に西洋クラシック音楽を崇拝し、自国の音楽を見下す風潮があるが、そろそろ日本人も、明治以来の音楽教育によって植え付けられた西洋音楽コンプレックスから脱却する必要があるのではないか。現に近代日本には、少数ながら、日本人としての美意職や音楽的伝統を基盤に、西洋音楽至上主義と闘ってきた作曲家や詩人たちがいた。古賀政男中山晋平本居長世、野口雨情らの作品を徹底検証、日本の歌を初めて実証的に評価した衝撃作。