美空ひばり 生誕70年 その3

 TVでもNHK、BSで2日間にわたりひばり特集をやった。延べ10時間を超えただろうか。録画したものを、暇にまかせてほとんど見てしまった。時代時代を思い出しながら、作詞家、作曲家などをメモしながら見た。「東京キッド」「あの丘越えて」「ひばりの佐渡情話」などタイムスリップして懐かしい。
 「港町十三番地」「哀愁波止場」なども改めて聞きなおすと、あの時代、ひばりあっての歌だったと思う。「大川流し」とか「車屋さん」など都都逸が入ってこれがまたいい。今では、NHKの番組をかなりチェックしていないと、都都逸とか、端唄、新内などを聞くことができない。ひばりが歌う端唄の中の「槍さび」というのも初めて聞いたがしびれました。
 私の家では、祖母と次女が日本舞踊や三味線をやっていたので、端唄、都都逸などが幼心になんとなく耳に残っている。遺伝子に書き込まれたのか、この歳になって、遺伝子が発現してきたのか、三味線の音や、端唄、都都逸、新内のようなものに妙に心ひかれる。 他の歌手の歌をカバーしているのも良かった。普通、カバー曲を聴くと、どうしてもオリジナルの歌手のイメージが強く、もうひとついただけないことが多いものだが、「恋人よ」「昴」「昭和枯れススキ」など、カバー曲と感じさせず、ひばりの歌になっていたのはさすがだった。
 昭和55年頃、全盛期のひばりが、生前の江利チエミ(ウスクダラを数十年ぶりに聞いた)や雪村いずみとの3人娘の映像も懐かしかった。
 これも若かった時の、北島三郎、森進一、五木ひろし達との共演や、見たことのなかった、永六輔の「テレビファソラシド」も楽しませてくれた。
◆最後は沢島正監督が、病気から回復した萬屋錦之助を口説いてひばり芸能生活40周年の舞台に友情出演してもらった、「春秋千姫絵巻」まで見てしまった。舞台芸能などはほとんど見ることなく、この歳まで来てしまったが、4日間、ひばりの歌、映像を見せられて、つい最後まで引っ張られてしまった。
 舞台放映が終わって、沢島正の「美空ひばりは、昭和におくられてきた、出雲の阿国だ」という言葉が印象に残った。
◆ひばりが愛した、古代から綿々と受け継がれてきた、“日本の良き芸能”、そして新しいものも取り込んだ、“日本のブルース”のこころを残し続けてもらいたいと、しみじみと思った。