靖国問題を読む

 8/15に小野田寛郎さんのことについて書いた。彼の書いた「だから日本人よ、靖国へ行こう」を読んだ。恥ずかしながら、この歳まで、靖国神社のことは「A級戦犯分祀」「首相の参拝問題」といった、断片的なことしか知らず、関連の本も読んだことがなかった。小野田さんのこの本を読んで、靖国神社というものがどういうものか、東京裁判がどういうものかいくらか理解できた。
 小野田さんが帰国して靖国神社に参拝した時に、マスコミからいろいろと中傷を受けた話、当時の田中首相から100万円の見舞金をもらい、そのままもらうわけにはいかぬと靖国神社に寄付した話など、知らない話がたくさんあった。小野田さんは、帰国した時のそんな日本に嫌気がさして、しがらみのないブラジルに渡って、ゼロから牧場経営をし、成功させた。
 小野田さんのこの本から、靖国問題の一端は理解できた。と同時に、もう少しいろんな分野の方が書いた靖国問題を読んでみたくなって以下の本を読んでみた・
◆「だから日本人よ、靖国へ行こう」(小野田寛郎
◆ 「日本はそんなに悪い国なのか」(上坂冬子
上坂冬子さんのものは「抗老期」というのを読んだことがあったが“靖国派”としてこういう本を書いていることは知らなかった。かなりズバズバとものをいう硬派だ。中曽根元首相との対談は面白かった。
◆ 「靖国問題」(ちくま新書:高橋哲也)
靖国問題の過去から現在に至るまで、哲学的観点からも分析しており、よくまとまっていると思った。
◆ 「靖国神社問題」(田中恒:小学館
  優しく、わかりやすく書かれている。「反靖国派」の立場で書かれている。
◆「靖国の戦後史」(田中伸尚:岩波新書
◆「頭を冷やすための靖国論」(三土修平:ちくま新書)

                                                                                                                      • -

これらの本をamazonのレビューで読むと、評価する意見と、ボロクソのレビューを書いているものと二分されている。それほど、この靖国問題がいろんな問題を含んでおり、どちら側を支持するにしても白黒をはっきりつけられないところに、この問題の難しさがあることは理解できた。

                                                                                                                      • -

靖国神社には官軍側、井伊直弼西郷隆盛、白虎隊などは祀られていない。
A級戦犯分祀問題
東京裁判とはなんだったのか。国際法上の問題。
宗教法人政教分離の問題。
靖国神社には、仏教徒キリスト教徒だった軍人も「神」として祀られている。遺族が合祀から外してくれと頼んでも、「明治天皇以来、一度天皇の思し召しで“神”となったものは外すことはできない」として、認められていないとのこと。
■台湾人、朝鮮人の合祀削除願いも聞き入れられていない。

                                                                                                                      • -

 いろいろな難しい問題があり、戦後の数々の「靖国関連訴訟」でもいろいろな判決があることも知った。
ともかくも、4,5冊読んでみて、靖国問題とはどんなことなのかはわかってきた。私としては靖国神社国家神道復古神道にはくみしないが、古代から続く“やおよろず神道”は仏教と共に擁護したい。また、大戦で命を落とした多くの戦没者の方々の御霊に素直に手を合わせることにはやぶさかではない。ただ、靖国神社に行ってみて、また、神社境内にある「遊就館」を見学して、“英霊を顕彰する”“英霊の「神々」を崇敬せよ!”との宗旨?には、何やら、胡散臭い新興宗教「靖国教」を感じてしまった。
 「頭を冷やすための靖国論」の中で、三土修平が「矛盾の顕在化としての靖国問題」、「現在の靖国神社シーラカンス」と語っているところに説得力があると思った。
 参拝した小泉元首相の後を受けた安倍首相は、まだ靖国参拝をしていない。当分、それどころではないだろう。いずれにしても、靖国問題は、日本国内はもちろんのこと、近隣諸国にもいろいろな問題を投げながら、ジグザグと進んでいくのだろう。
 今更ながら、歴史を正しく伝えていくことの大切さ、難しさを感じている。