達磨絵 裏打ち

 禅画(達磨絵)教室の“妙齢”のIさんが「裏打ち」を教えてくれるというので、教室の仲間とおじゃました。このIさん、お茶の先生もされている。書道の先生もされていたとのこと。そんなことで、自分で掛け軸を作っている。今日は、本格的な「裏打ち」の仕方を教えていただいた。
 霧のふき方、糊のぬりかた、貼り方、乾かすための板への貼り方など細かい作法というか、テクニックを教えていただいた。「裏打ち」とは、ただ、描いた禅画に裏紙を糊で貼るだけかと思っていた。
 裏打ちとは、糊を付けた裏紙を、文字通り裏から打つことだと初めて知った。ちょっと硬い毛のついた、太い刷毛の毛先で、糊を付けて元の禅画の裏に貼った裏紙を、強く“裏から打つ”ことだったのだ。
 これは、原画と裏紙をしっかりと一体化させるための作法のようだ。
このIさん、これだけではない、「古事記」「神皇正統記」などの解説の講演を聴きに出かけ、それらの原文を国会図書館でコピーし、講義で聴いたメモを書き込んだものを、ご自分で和綴じにしている。その和綴じの、“自分の本”を、掛け軸作りなどに使った残り布を、パッチワーク的に貼り付けて表紙を作られている。見事な造形だと、ただただ感心させられた。
 松原泰道さんの「南無の会」に参加されたり、小林秀雄の愛読者とか、“大変な方”と知った。やはり、能ある方は・・・なのだなーと感心し、Unchiku Henryはまだまだ「蘊蓄」先行で、反省すること大でありました。
 もっとびっくりは、このIさんのお祖父さまは、有名な馬の彫塑家で、馬事公苑靖国神社にある馬の像を作られた方だという。庭にも立派な馬の親子の像がさりげなく置かれている。
 
 日本はこのIさんのような、こう言っては失礼かもしれないが、市井の文化人、教養人がかなりいる。
 ビジネスマンも定年になってからではなく、若いときから、少なくとも何かひとつ、日本の伝統的な文化に関わる、習い事や趣味を持つべきだと思った。俳句、短歌、謡、詩吟、尺八、水墨画、禅画etc.私もせめて、40代ころから、何かひとつやっておけばよかったなと思った。
 まあ、平均寿命が長くなったから、これからでも時間はある。楽しく、有意義な「隠居道」を全うしたいと、あらためて思った。