読み初め『源氏物語』

 昨年は源氏物語千年紀だった。数十年前から「源氏物語」を読まなくちゃと思いつつ、今日に至るまで読まずにきてしまった。高校1年のときに、古文の授業で源氏物語があった。ご存じ、「いずれのおほん時にか、女御、更衣あまた侍ひけるなかに、いとやむごとなききはにはあらぬが、・・・」と始まるわけだが、“おほん”、“女御”、“更衣”、“侍ひける”、“いと”等々、ことごとく古語辞典を引いた思い出がある。国語に弱く、かつ、国語が好きではなかった私にとって、英語よりよほど予習に泣かされた。そんなわけで、内容的には『徒然草』などは好きだったが、古文や現代文は苦手だった。
 社会人になってからは、『方丈記』『徒然草』『平家物語』などは原文、解説物も読むようになった。『源氏物語』は、いつかはと思いつつ、長編だったのと、どうせ読むなら原文でなどと、なまじ考えていたものだから、結局手つかずだった。
 昨年秋に「掌編 源氏物語」(馬場あき子)という本を図書館で見つけ、とりあえず、この本で源氏物語の概要がわかるだろうと読んだ。内容としたら「あらすじ・源氏物語」だ。歌人である著者の歌物語的捉え方にツボを心得た繊細さがあって、心理の襞がよく描かれている。文章に香気があふれていて、源氏物語のストーリーの全容と流れが理解できた。
 谷崎源氏、与謝野源氏、寂聴、田辺聖子等、いろいろな方の現代語訳がある。誰のものを読むのがいいのか分からず迷った。玉上琢彌のものが、原文も載っており、現代語訳の格調が高いとの評があったので、これにした。年末までに少し読み始めた。
 単に源氏物語のストーリーを楽しむだけでなく、古文の味わい、「源氏」の書かれた時代背景、「源氏」の中に表現されている“華厳仏教”思想なども読んで見たいと欲張っている。とはいえ、自分の力だけではそういう読みができるとは思わない。
 昨年は千年紀ということで、いろいろな源氏関連本もたくさん書店の店頭を賑わした。そんな中、図書館で目にとまった『源氏物語を読むために』(西郷信綱)を年末に読んだ。源氏を読むためのヒント、アドバイス、読み方などが詳しく語られていて面白かった。
 ということで、今年の読初は、1年遅れで、いよいよ源氏物語に挑戦することにしました。時々、古語辞典を引きながらじっくりと読んでいきたいと思っている。