Obama Inaugral address(オバマ大統領就任演説)に思う。

 オバマ大統領の就任演説を寝ずに頑張って聴いた。なまじ、少しは英語が分かるので、通訳の声とオバマの声が頭の中で混ざってしまい、理解が中途半端になってしまった。
 そんなわけで、ネットで英文と翻訳文を検索し、両方を読み直した。
 全体的には、アメリカの現状、世界情勢を踏まえ、今までの大統領にない素晴らしいスピーチだったと思う。しかし、いろいろな問題について触れている反面、主張したいポイントが、それ程明確ではなかったように感じた。
 オバマ演説について、A塾の友人が佐藤優氏と藤井厳喜氏の指摘を紹介してくれた。
「(アメリカ人の定義に)イスラム教徒にくわえてヒンズーを入れた。これでオバマはアフガン戦争に本気なことを示した」(佐藤氏)。「無神論キリスト教徒と並べるという無鉄砲」(藤井氏)。(この指摘ごもっともだ。→Henry)
 オバマ演説は
 「米国は地球上のあらゆる場所から集まった言語と文化によって形つくられた」とあり、次の文節へ繋がるが、問題は以下の箇所、
For we know that our patchwork heritage is a strength, not a weakness. We are a nation of Christians and Muslims, Jews and Hindus - and non-believers.
(我々の国にはキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒ヒンズー教徒、 無宗教の人がいる)。
 プロテスタントが主流の国でありながら、カソリックを含めるので「クリスチャン」とよび、ユダヤ教徒を別途に分類する。くわえてムスリムを並べたのはテロリストとの戦争の連帯を意味し、ここへインド重視とばかりヒンズー教徒を加えたが、仏教徒は入れなかった。替わりに無神論者を入れて、これではキリスト教徒、ムスリムユダヤ教徒は怒り出すだろう。との内容のメールをくれた。
 
■Henry: 自称、Budhistの小生も、Budhismが入っていないのはおかしいなと思いながら読んだ。オバマ当人と周囲のスピーチライターには、まさか同盟国日本が仏教徒の国でもあることを知らないか、重視していないのだろう。
 日本のみならず、東南アジアの仏教国のことを考えていないのではないか。(アメリカには、かなりの数の東南アジア人がいるのに!)インドのヒンズー教をあげるなら、中国、韓国の儒教道教のことも考えるべきだし、インドはヒンズー教だけでなくガンジー以前から脈々と続いている仏教思想があることにも、考えが及ばなかったのだろうか。
 ユダヤ教をあげながら、その他の民族の宗教を無宗教と、ひとくくりにしたのは問題だと思う。世界に散らばるユダヤ人はたくさんいるが、ユダヤ教の国家はイスラエルだけだ。(アメリカにおけるユダヤ、及びユダヤ人問題が大きく潜んでいる。)
 アメリカ国民の宗教別人口構成でいけば、たしかに、仏教徒の人口は少ない。しかし、オバマの演説は、アメリカ国内だけでなく、世界にむけて意識しているはずだ。そうであれば、「世界には(アメリカ国内には)、「CHIRISTIANS AND MUSLIMS JEWS AND HINDUS AND NON BELIEVERS」 ではなく、「CHIRISTIANS AND・・・そして、いろいろな、異なった神(仏)を信ずる人々がいる」と言うべきだったと思う。
 英語ではsyncretism(混淆主義≒八百万ism)という言葉はあるが、西欧人の宗教の中には「神=God=一神教の神」しかないのが問題だと思う。
「八百万の哲学、信仰、思想」を世界に向けて発信しなくてはいけないと思う。
 ともあれ、スピーチの細かいところはさておき、全体としては、オバマが新しい時代の幕開けに際し、チャレンジングに語ったことを喜びたいと思う。オバマのスピーチの目指す方向に全世界の人々が、それぞれの「Responsibility」を果たしていくべきではないかと思った。
■一方、オバマ演説の中国での報道が問題になっている。「・・・共産主義に勇敢に立ち向かった・・・」という箇所を削除して報道したそうだ。
 Recall that earlier generations faced down fascism and communism not just with missiles and tanks, but with sturdy alliances and enduring convictions.
「先人たちがファシズム共産主義に、ミサイルや戦車だけではなく、強固な同盟と揺るぎない信念をもって立ち向かったことを思い出してほしい」
 更にこの後の文章、
To those who cling to power through corruption and deceit and the silencing of dissent, know that you are on the wrong side of history; but that we will extend a hand if you are willing to unclench your fist.
「腐敗や欺瞞、反対者への抑圧を通じて権力の座にしがみついている者たちよ、あなたたちは歴史の誤った側にいる。もし握っているこぶしを開くなら、われわれは手を差し伸べる」の部分をすべて削除している。という。
この部分は、中国の現政権への批判を連想させる可能性があることが削除の理由とみられる。これらの対応は共産党宣伝部の指示によるものか、それとも各メディアの自粛なのかは不明。
 今回、オバマ大統領の就任前に「中国との関係を重要視する」などの発言は大きく取り上げられていた。とはいえ、3億人近いインターネット人口を持つ今日の中国では、このような情報操作はほとんど機能していないのが実態だ。香港、シンガポールなどのメディアに掲載された中国語訳はたちまちネットを通じて中国国内に広がり、演説内容をそのまま伝えない中国メディアへの抗議が各ネット掲示板に殺到。「私たちはもうだまされないぞ」との書き込みもあった、という。
 ある北京在住の大学教授は「聞き流してもよいところをわざわざ削除したことで、逆に強調されてしまった。当局にとって逆効果だったのでは」と話している。
■Henry: 世界は小さくなっているのだが、まだまだ、いろいろな国々の、文化、宗教、政治の差異が目立つ。アメリカは人種のるつぼ(溶け合っている)ではなく、人種のモザイクであると言ったアメリカ在住時の上司の言葉を思い出す。世界の民族が、一つの宗教、政治体制でまとまる(溶け合う)ことはあり得ない。違いを相互理解した上で、世界の民族の美しいモザイク(画)を描いていこうという努力、Responsibilityが求められるのではなかろうか。