聖徳太子はなぜお札から消えた。 『聖徳太子虚構説を排す』

 聖徳太子がお札から消えて何年たったろうか。発行は中止されている。まだ有効な紙幣なのだが最近は全く見かけない。福沢諭吉の一万円札、樋口一葉の5千円札は聖徳太子に比べると格落ちの気がする。聖徳太子がお札から消えたのは理由があるのだろうか。Webでいろいろ検索したが、消えた理由を説明しているサイトは見つからなかった。
 私が読んだ古代史関係の本の中で、聖徳太子が実在しなかったという説があることを知った。歴史家がいろいろと議論をしている。 中部大学の大山誠一教授は、『<聖徳太子>の誕生』という著書の中で、厩戸王は飛鳥時代にたぶん斑鳩宮に住み斑鳩寺も建てたであろう有力王族であるという存在の可能性は否定しない。しかし、推古天皇の皇太子かつ摂政として、知られる数々の業績を上げた聖徳太子は、『日本書紀』編纂当時の実力者であった、藤原不比等らの創作であり、架空の存在であるとしている。
 最近では、谷沢永一が『聖徳太子はいなかった』(2004年)を著している。
 一方、聖徳太子虚構説に対しては、遠山美都男 、直木孝次郎、上田正昭、曽根正人などの反論がある。
 A塾でご指導を受けている田中英道先生の『聖徳太子虚構説を排す』を読んだ。田中先生は大山説や矢沢永一の説を、美術史家、形象学から見た歴史の分析、法隆寺五重塔の心柱が年輪年代測定法で594年伐採のものであることや、金堂の「釈迦三尊」像の光背の銘文などの分析などから、虚構説を排撃、論破している。
 私のようなど素人が古代史を語る資格はないが、今までに勉強してきた範囲で考えると、田中英道先生の考証と論理の方が説得力があると思う。
 たしかに、聖徳太子という名称は、厩戸王子の死後つけられた名前だ。日本書紀の記述にもいろいろと問題点のあることはわかっている。しかし、聖徳太子虚構説を唱えるリベラル保守や左翼系の学者を支持する動きがあるのだろうか。
 お札の発行は日本銀行法に定められた中で、肖像などの様式は財務大臣が決めることになっているとのこと。聖徳太子の像がお札から消えたのは、将来の5万円札、10万円札に聖徳太子を復活させる可能性もあるからという説もある。それとも虚構説を支持するところからの圧力があったのだろうか。
 聖徳太子についてはウィキペディアにも詳しい説明がある。「聖徳太子 お札」や「聖徳太子」で検索すると、いろいろとおもしろい記事が出てくる。聖徳太子に関する本も今までに数冊は読んだが
もう少し読んでみたいと思った。