はとバスツアー:諏訪大社(下社)


 はとバスの日帰りツアーで諏訪大社に行ってきた。中央高速の八王子を過ぎると車窓の景色が、突然、雪景色に変わった。「都内のビルの景色を抜けるとそこは雪国だった」という感じだ。埼玉での昨日の雨がここでは雪だったのだ。風も強かったのか木々が皆樹氷になっていた。山あいの雪化粧した里山と、木々の樹氷が白と黒の墨絵のような世界を現出していた。予想外の幻想的な風景に早起きの眠気が吹き飛ぶ。
 長い笹子トンネルを抜けると、反対にそこは雪のない冬景色だった。土地の高度差のためでもあるらしいが、この狭い日本は山を一つ越えると天候が一変することはよくあることだ。。
 はとバスツアーは初めてだった。ピアニシモという「貴賓席の旅」バスで、23人乗り、化粧室付き座席はゆったりとしていて、新幹線のグリーン車並みだ。コーヒーサービスや音楽(ヘッドフォン)、DVDでの映画も見られる。
 がら空きの高速を気持ちよくまっしぐら、予定より早めに諏訪大社着。先に、大社横の小さな渓流添いの雪の中の道を行って、万治の石仏を見る。大きな丸い石の服を纏った体に、小さめの首がちょこんと乗った、大きいがどこか可愛らしい姿の石仏だ。時計回りに三周り、願いを唱えながら回る。回り始めと周り終わりの「決めの言葉」をうっかり言い忘れてしまったのが残念。

 諏訪大社御柱祭に行きたいと思っているのだが、車で行くか電車で行くか、下見を兼ねての今回のはとバスツアーだった。
 諏訪大社は上社、下社、とあるが、今回のツアーは下社のみ。
大社というのでもう少し大きいのかと期待したのだが、鹿島神宮香取神宮などと比べるとかなり狭い。
 隣の一人がけ席の若い男性が途中から見えなかったので、ガイド禳に訪ねたら、下社を見たら上社も見たくなって途中下車したとのこと。全く同感であったが、シニアのHenryとしては貴賓席バスで東京まで送って貰った方が楽なのだった。
 建御名方命を祀っているということで、風格と雰囲気は素晴らしい。前回の御柱祭で山から降ろされた御柱が本殿の四方に建っている。申年、寅年の時に、山から切り出され降ろされたご神木が「御柱」として、本殿の周囲に建てられる。知らなければ、ただの太く高い柱が立っているだけだ。何百人もの男がこの御柱を、最大斜度六十度の斜面をすべり降ろす、命がけの行事なのだ。古代から続いている伝統的祭事に思いをはせてこの御柱を眺めると、また別の感慨が湧く。
 湖畔の諏訪湖ホテルで昼食をいただき、隣接する諏訪湖文化財指定、片倉館の千人風呂にはいる、深い風呂で、浴槽の下には玉砂利が敷いてある。浴槽の中を歩くと軽い足踏みマッサージのような気分で気持ちが良かった。
 湯上がりにホテルのロビーでビールを飲みながら、雪景色のきれいな庭を眺める。自分の車で来ていたらこういう事はできない。時間がゆったりと流れているようで、ささやかながら「時持ち」のぜいたくを味わうことができた。
 入浴後は湖畔にある「北澤美術館」でエミール・ガレのガラス工芸品を見てから帰路についた。帰りの中央高速も渋滞が全くなく、快適なバスツアーだった。