「自家製 文章読本」(井上ひさし)

 もう少し軽いタッチで書かれている文章読本と思いきや、どうしてどうして、あらためて、井上ひさしの該博な知識に驚いた。文章読本と言えば、谷崎潤一郎三島由紀夫丸谷才一、などが有名だ。
国語嫌いだった小生は、これらの文章読本も、若いときに買って勉強しようと思ったが、少し読んで書棚の奥に隠れていた。
 井上ひさしは、これら文章読本の名著を踏まえた上で、さらに突っ込んだ文章論を展開していて、“名著”よりもわかりやすく書かれていると思う。小説をあまり読まない私にとっては、“名著”の著者達の言う、「作文の極意は、ただ名文に接し、名文に親しむこと」という理屈はわかるが、名文に接することの少ないものにとって、親しむこともままならない。近道はないと知りつつも、何か要点をわかりやすく説明してくれる“文章読本”はないものかと思っていた。
 「自家製文章読本」も決してやさしい本ではないけれど、論理的にかつユーモアも入れて、わかりやすく書かれている。この本の中で書かれていることを、そう簡単には実践できないが参考になるところ大であった。
 私にとっては、30代で読んだ本多勝一の「日本語の作文技術」(朝日文庫)や「理科系の作文技術」の方が、ビジネス文書を書く際に役立ったと思う。「日本語の作文技術」は、係長試験や課長試験を受ける前の勉強材料として、多くの部下、後輩に推薦した。

 ブログを書くようになってから6年目になる。文学が好きで作文が私よりもうまい家人が、私の文章や誤字脱字をよく添削してくれる。そんな家人が、文章が少しはうまくなったといってくれたり、妙齢読者さんや息子達からもアドバイスをもらう。自分でもまだまだ作文修業をしなければと思っている。
 そんなわけで「自家製文章読本」をきっかけに、「文章読本」(丸谷才一)や「日本語で一番大事なもの」(丸谷才一大野晋)などを再読している。

自家製 文章読本 (新潮文庫)

自家製 文章読本 (新潮文庫)