多田冨雄さんの死を悼む
多田冨雄さんが4月21日、76歳でなくなった。今日、TVで追悼番組が放送されるという。
2001年に脳梗塞で倒れ、声を失い右半身不随となっていた。しかし執筆意欲は衰えず、執筆活動を続けた。脳梗塞後の、鶴見和子との対話『邂逅』、柳澤桂子との『露の身ながら いのちへの対話 往復書簡』、石牟礼道子との『言魂』など、病を持った人同士の壮絶な病気との闘いの話や、人間のいのちの根源に関わる話など、鬼気迫るものがある。
多田冨雄さんとの出会いは、今から20年ほど前、LAから一時帰国した際、高校時代からの親友(現在は開業医)が勧めてくれた『免疫の意味論』が初めてだった。空港に行く前に買い求め、一気に読んだ。その後、『生命の意味論』、『ビルマの鳥ノ木』、『脳の中の能舞台』、『独酌余滴』、『懐かしい日々の想い』、山折哲雄との対談『人間の行方-二十世紀の一生、二十一世紀の一生』、『ダウンタウンに時は流れて』など、どの文章も人間に対する深い洞察、しみじみと心の奥底にしみ入るような表現が素晴らしいと思う。

- 作者: 多田富雄
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/06
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多田冨雄さんを偲び、冥福を祈り、読んでいなかった『寡黙なる巨人』『落葉隻語 ことばのかたみ』等を読んでみようと思う。