「雪月花の数学」「感動する数学」(桜井進)
題名にひかれて読んだ。黄金比、白銀比、フィボナッチ数列、指数曲線、対数曲線、オイラーの公式などをやさしく解説している。
黄金比については、「ダビンチコード」でも取り上げられ、昔からミロのヴィーナスやパルテノン神殿など、西洋の美術、建築物に黄金比が色々なところで使われていることは知っていた。
この本では「白銀比」について説明している。白銀比というのは1:ルート2の比率のことで、折り紙、風呂敷、雪舟の水墨画、菱川師宣の見返り美人画など、日本の文化、芸術にはこの白銀比が多く見られるという。
その他、畳2枚(二畳)で正方形の一坪、茶室の四畳半、法隆寺五重塔の最上階と最下層の庇の比、金堂正面の幅(上層対初層)など、法隆寺の基本設計には「1:ルート2」が多く取り入れられているという。
1,1,2,3,5,8,13,21,・・・、この数列をフィボナッチ数列という。この数列は隣り合う2項の和が次の項の値に等しいというもので、この2項間の比が黄金比[(1+ルート5)/2=1.618033988 約1.6]に近づく。
この数列の各項の値を半径とする円を描き、その円弧をつなげていくと螺旋が生まれる。
スイスのヤコブ・ベルヌーイという数学者が自然界の様々な螺旋を定式化し、対数螺旋とした。そして、対数螺旋とフィボナッチ数列の描く螺旋がほとんど同じになることを発見した。
この渦巻きは、ひまわりの種子(花)の付き方、松ぼっくりの模様、朝顔の蔓、台風、DNA、銀河系、オウム貝、等々、大自然の営みの中には、螺旋曲線、黄金比が数多く存在する。
多少、牽強付会的な感もも否めないが、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」のあのダイナミックな波がフィボナッチスウレツから導かれる螺旋にきわめて近いという説にも、何となく納得させられる。
この他、本の中では、富士山の稜線が指数曲線(y=eのx乗)に重なるとか、ピアノの音階とピアノの形の数学的意味や、俳句、五七五の世界、日本の生け花の七五三などと素数との関係など、数学好きには面白い話が多く語られている。
以前にも書いたが、e(ネイピア数)のiπ乗+1=0というオイラーの公式の意味するものなど、分かりやすく説明されている。
数学が好きな人はもちろん、嫌いな人も、自然の中、美術の中に隠されている数学的美しさを味わってみようと思われる方にはお勧めです。