「夫婦脳」(黒川伊保子:新潮文庫) 

夫婦脳―夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか (新潮文庫)

夫婦脳―夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか (新潮文庫)

 著者の黒川伊保子さんは、奈良女子大の物理学科を出て、株式会社感性リサーチというところの代表取締役をしている。この本、簡単にいってしまえば、要は男女の脳の違いに基づく夫婦論であります。大変面白く、身につまされながら読みました。 
 以前「話を聞かない男、地図が読めない女」:[男脳女脳が「謎」を解く]という本のことを、2005-05-28 のブログに書いた。この本の内容とも共通するところも多いが、理系の女性が書いていて、夫婦のこと、夫脳、妻脳のことをどちらに肩入れすることなく、書いているところが納得できる。
 1ページ目に「夫婦ほど、脳科学的に興味深い関係も珍しい。なにせ、生殖相性(遺伝子配合の相性)は人としての相性に反比例する。男女は、生殖相性の良さを察知して恋に落ちるので、「激しく愛し合った二人」ほど人間相性は最悪ということになる。」と書きだしている。
 私たち夫婦も大学の同級生、私は一浪で家人は現役なので歳はひとつ違い。同じクラブにも所属し、運動部のマネージャー同士でもある。
 今となっては、当時“激しく愛し合った”かどうかは定かではないが、そこそこの関係ではあった。結婚して40余年、人間相性はどうなっているか。それほどひどくはないと思うのだが、「夫婦脳」を読むと、男脳、女脳の違いはどうすることもI can not・・・。ページ毎に納得することばかりだ。
 以下、感心させられ、傍線を引いた箇所をいくつか抜き出してみました。
1.女性脳は、感じたことを感じるままにどんどん言葉にしていく。逆に言えば、脳に溢れることばを、口から出さないとストレスが溜まる。アメリカのある心理学者によれば、女性が一日のうちに口にしなければならない単語数は2万語とも言われる。 一方男性脳のほうは「垂れ流されることば」にストレスを感じる脳の持ち主だ。一日せめて30分の優しい沈黙が必要なのである。
2.男性脳には「事象を、イメージのまま、無意識にぼんやりと整理する」時間が欠かせない。・・・この“ぼんやり”の間に、男性脳は、今日の出来事を何となく整理しているのだ。・・・女性脳にはこのタイムラグが必要ないのだ。
3.夫婦にはある法則がある。7年目、14年目、21年目、28年目・・・と7年目毎に夫婦の危機がやってくる。人間の骨髄液は、毎日少しずつ入れ替わるのだが、まるまる入れ替わるのに7年かかる。すなわち、満7年以上前の細胞は残っていないのだ。・・・結婚7年目、夫婦の免疫システムは、互いの匂いを、環境の一部だと“納得”する。平たく言えば、ドキドキしなくなるのである。
 ■7年目の浮気という言葉もあるが、我等夫婦はこの法則は当てはまらない。年中危機?なのかも知れない。
4.・・・まずは不快な気持ちにさせたことを謝る。それをせずに、言い訳したりするから、気まずい雰囲気が残るんじゃない?
5.なじる人は傷ついている。「オレだって○○(忙しいん)だという防護から入るから、妻の心はしこるのだ。・・・なじられている内が人生華なのかも知れない。
6.大昔の不満を、まるで昨日のことのように臨場感たっぷりに語る妻。・・・過去の類似記憶を総動員する。
7.夫婦の脳は一対で精緻なメカのようなものであり、決して離れてはいけない。恋とか愛とかを越えた、共に生きる意義がそこにはある。
 ・・・夫婦は一心同体という本当の意味はそこにあるのだと思う。・・・心をひとつにするは、健やかな暮らし=よりよい生存という、生物としての使命を果たす思いにおいてであり、「同じことを感じ、考える」ことではない。
 とまあ、こんなふうな話しが続く。この歳になっていまさらという感がなきにしもあらずだが、この他にも、あちこち、なるほどと頷いてしまうところが多い。
 我が夫婦の関係を見つめ直しても、反省させられ、考えさせられるところ大である。 皆さんのご夫婦の、夫脳、妻脳の関係は如何なものでしょうか。ご関心がありましたら、ご一読の上、感想を聞かせてください。