「海人と天皇(日本とは何か)」(梅原猛:朝日文庫、上・中・下)、「藤原氏の正体」(関祐二:新潮文庫)

 「海人と天皇」は、最近の著作かと思って読み始めたが、2002年に小学館から刊行された梅原猛著作集から文庫本として三分冊で出版されたものという。
 一七条憲法聖徳太子の時代から桓武天皇までの時代を、飛鳥浄御原令大宝律令養老律令記紀風土記などを引用しながら語っている。最近の考古学的発掘も踏まえて、梅原流の分析をしている。
 安珍、清姫で有名な紀州道成寺にまつわる「道成寺宮子姫伝記」などの文献から、聖武天皇の母、宮子は海人の娘であったと推理する。天智天皇から天武、持統、元明、元正、文武、聖武孝謙淳仁、称徳と続く天皇とその皇后たち、天皇や皇后に近づいた、行基、玄纊、道鏡などの僧侶たちとの関係、その背後で天皇家をあやつる藤原氏一族の話など、面白く読んだ。
 今まで、古代史関係はある程度読んできたが、高校時代以来、歴史の苦手な小生、いまだに、事件と人間のつながり、歴史に流れが今一つ線としてつながらなかった。今回のこの本、上中下といささかくどい内容のところもあったが、少し歴史の流れが見えてきた気がする。

 以下は本の帯から引用です。
※ 女帝の皇統の永久化を目論む持統天皇。その野心につけ込んだ藤原不比等は、養老律令を恣意的に改竄し、天皇家から絶大な信頼を得る。しかし、そこには藤原家が独裁的な権力を発揮できる仕組みが巧妙に隠されていた。自らの死後をも見据えた不比等の野望は実を結ぶのか。

※ 天皇を頂点とする律令国家を完成させた不比等。彼はさらなる藤原氏の繁栄を目論み、娘・宮子をその忌避すべき出自を隠したまま文武天皇に娶らせる。彼の真の狙い、そして多くの女帝を輩出した飛鳥・奈良時代の隠匿された歴史の謎とは?

※ 聖武天皇の母である宮子は「海人の娘」だという伝承が、今も紀州に残っている。しかも、その養父は藤原不比等であるという。歴史の転換期に、不比等の姿が見え隠れするのは、単なる偶然か?彼の妄執は権力のみならず、天皇家に血の繋がりをも求め始める―。

※ 僧・道鏡を恋人とした孝嫌女帝は、天皇の位をも彼に譲ろうと画策する。それは、自らが海人の血を引くことに起因する、貴族制破壊への屈折した欲望か。それとも、“国家”と“宗教”の一体化を目指す壮大な政略か。天皇家の血筋を巡る争いの結末は。

以前から店頭に並んでいた、関祐二の「藤原氏の正体」を梅原猛の「海人と天皇」を
補足、参考にする意味で読んだ。今までの関祐二の本の中でさかんに語られている内容で特に目新しい内容はなかったが、復習として分かりやすかった。