[本]『美しい「形」の日本』(文字ではあらわせなかった美の衝撃) 

A塾の田中先生の新しい本が出たので読ませていただいた。
日本には建築の形、仏像の形、精神の形から、天皇家の統治形態、民主政治のあり方、文化伝統の継続、社会におけるそれぞれの役割分担の形等、様々な形がある。先生はそのような日本独自の様々な形の意味、美しさ、素晴らしさを語りながら、近年、西洋文明に圧倒された明治以降の知識人が文字に記されたものばかりに価値を見出すようになった結果、「形」に対する美意識を失ったと言う。
・日本美術は文字では残されていない。
・形の美しさは言葉では到底表現できない。形と言葉は別物。形は文字によって固定することができ ない。
・形、制度、慣習、しきたりなど、形態言語によって読み解かない限り、日本の文化や歴史は分から ない。
  等々、言われてみればどれもごもっともである。

 歌舞伎、能、狂言、各種の踊りなど、どれも日本独特の形、型の文化の伝統を引き継いできている。私なども、この歳まで、日本の古典芸能の「形」の美しさ、素晴らしさにほとんど気がつかずにきた。
 最近はモンゴル力士に圧倒されっぱなしの大相撲も、行事の立ち居振る舞い、力士の仕切り、横綱の土俵入りetc.これらも神事としての国技の「形」を保っている。

 落語等も、名人の芸は素晴らしい「形」を持っている。
剣道、柔道、弓道、華道、茶道など、「道」とつくものは皆それぞれの「形」を守っており、一部、言葉で説明されたものも残っているが、言葉では伝わらない奥義を、「形」をもって伝え、習得していくものなのだろう。

 気がついてみれば、日本には西欧とは異なる色々な文化の「形」が日常の生活の中にもたくさんある。もっと、日本文化の「形」を大事にし、また、味わう必要があると思った。