辞書引き比べ 「恋愛」

舟を編む」を観たり、「辞書を編む」を読んで、手元の辞書で、"恋愛"を引き比べた。

岩波国語辞典 「男女間の恋い慕う愛情」
広辞苑    「love の訳語、男女が互いに相手を恋い慕うこと。また、その感情」
 確かに、loveが入って来る前には日本語には「恋愛」という言葉は無かったのかもしれない。

 三省堂国語辞典「男女の間で恋をして相手を大切に思う気持ちをもつこと」
 これら3つは優等生的説明だが、何となく物足りない。

 そこに行くと新明解国語辞典(以下、”新明解”と表記)の語釈はふるっている。
 また、新明解も版によって語釈を変えてきているのも面白い。

新明解第4版 「特定の異性に愛情をいだいて、二人だけで一緒にいたい、できるなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態。」

 初めてこの語釈を読んだ時は、思わずうなってしまった。ところが、この「合体」が問題になったのか、第5版では
新明解第5版 「特定の異性に愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かちあいたい、できるなら肉体的な一体感も得たいと思いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いにかられたり、まれにかなえられて歓喜する状態に身を置くこと。」
 と、トーンダウンしている。 更に第6版になると、
新明解第6版 「特定の異性に対して、他のすべてを犠牲にしても悔いないと思いこむような愛情をいだき、常に相手のことを思っては二人だけでいたい、二人だけの世界を分ちあいたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。」

 新明解は第3版から持っていたのだが、5版が出た時に3版を捨ててしまった。今思うととっておけばよかったと悔やまれる。その後、6版を買い、古本屋で4版を求めた。現在は7版になっている。 
 新明解の初版から4版までは語釈の変更はなかったのではないかと思う。語釈が時代とともに変化するのは仕方ないことだろうが、山田孝雄が生きていたら、この語釈変更を認めなかったのではなかろうか。