「風土記の世界」(岩波新書:三浦祐之)

 今までに、古代史についてはそこそこの本を読み、記紀については三浦祐之さんの「口語訳古事記」や「古事記の世界」なども読んできた。風土記については、出雲国風土記常陸国風土記など関心はあり読んでみようと思いつつ、ちょっと敷居が高く読んでいなかった。

 今回、岩波新書から三浦祐之さんの「風土記の世界」が出たので読んでみた。

 以下、amazonレビューから内容については一部コピペさせていただきました。

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風土記は、713年の中央政権の命令によって、各地方が「解(=公文書)」として「地理誌」的な文書(今で言う「風土記」)の提出を求められたものだという。「古事記」の成立が712年(著者は疑問を持っている様であるが)、「日本書紀」の成立が720年だから、微妙なタイミングではある。そして、現存する「風土記」が常陸国出雲国播磨国豊後国肥前国の5つ"だけ"である事が紹介されている。以下、これらの国の「風土記」を詳細に吟味しながら、その豊饒性を味わうと共に、「古事記」、「日本書紀」との関係を考察するという全体構成。

 

特に、常陸国の「ヤマトタケル」の描き方が、日本の正史である「日本書紀」とは随分異なるという指摘が鋭く、「歴史とは勝者の歴史」という言葉が改めて頭に浮かんだ。「解」をヤマト政権に提出するという事は、自国の隷属を認めた事と同一なのである。しかしながら、その「解」の中でヤマト政権を揶揄する様な事を書いたり、「日本書紀」とは異なった事を書いたり(「日本書紀」と各「風土記」の成立年代順が不明な点が惜しまれる)と地方の反骨心も窺えて面白い。出雲国の場合はもっと面白い。「日本書紀」中では一切触れられていない、所謂「出雲神話」が、「古事記」中の「出雲神話」と似た形式(著者の判断)で「風土記」中に記載されていると言うのである。ヤマト政権による出雲政権の打倒を示唆する逸話であると共に、「古事記」、「日本書紀」及び「風土記」の三者の真の関係を知りたいとの欲求を駆り立てる逸話でもある。「風土記」という新しい着眼点で古代史に新しい光を当てた好著だと思った。

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記紀風土記の関係、専門家でも解釈が定まらない問題が多いとのこと。この本を読んで日本の古代史、まだまだ分かっていないことも多く、難しいものだと思うとともに、謎解きの推理を楽しみ、古代人の思いなど、想像をめぐらしながら読むのは、勉強にもなり、楽しかった。

 

風土記の世界 (岩波新書)