読初め

 ドナルド・キーンの「日本人の美意識」と「日本語の美」を読んだ。今までにキーンさんの本は何冊か読んできたが、改めて、キーンさんの永年の日本文化の研究、日本語での読み書きの凄さに驚嘆する。母国語が英語であるからこそはっきりとわかる日本文化の特徴、たとえば日本語に置ける主語の曖昧さや、一つの表現から複数の解釈が可能なものについてキーン氏による鋭い指摘がなされている。藤原定家の「みわたせば花も紅葉もなかりけり裏のとまやの秋の夕暮」という表現の場合に、これは秋が終わりつつある時期を指しているのか、あるいは、ある秋の日の夕暮れ時をさしているのか、という事例が紹介されている。
 こういった、日本語、日本文化の「暗示」「余情」ないし不規則性、簡潔、ほろび易さ等について、日本人の見落としがちな、視点、解釈などを教えてくれている。
 「日本人の美意識」の中では、一休宗純の頂相と文章が興味深かった。一休については断片的な知識しかなかったが、狂雲集など、改めて読んでみたくなった。