《数学を読む 岡潔「数学する人生」、森田真生「数学する身体」その1》

森田真生の「数学する身体」という本が書店に並び、気になってはいたが読んではいなかった。そうこうするうちに、岡潔の「数学する人生」(岡潔著、森田真生編)が目に止まり読んでみた。
 岡潔は若いときに、「春宵十話」「春風夏雨」などを読んで感動したことがある。数学のことよりも、彼の世界観に感銘を受けた記憶がある。その後、小林秀雄との対談「人間の建設」などを読み、すごい人だったんだなと改めて思った。
 「数学する人生」は、岡潔の「日本のこころ」という本を読んで数学の世界に惹かれ、東大文学部から工学部に移り、卒業後理学部数学科に学士入学したという森田真生が、編集したものである。
 「数学する人生」は岡潔京都産業大学での「最終講義」、フランスでの「学んだ日々」、「情緒とはなにか」「数学と人生」などが書かれている。今まで、知らなかった岡潔の数学する姿や、俳句や仏教について、芭蕉道元、念仏についても語っているところが興味深かった。仏教にいついては華厳経理趣経道元正法眼蔵などを深く読み込まれている。また、俳句についても、芭蕉だけでなく多くの俳人の句も読み込まれていて、あの中谷宇吉郎連句をしたというのも驚きであった。
 岡潔の「多変数解析関数」に関する論文などの発表がそういった日本の文化、宗教(特に仏教)、日本の"情緒"をベースにして生まれたものだったのだということも今回の驚きであった。
 改めて凄い数学者であるとともに、哲学者でもあったと思った。