「南方熊楠と宮沢賢治」(鎌田東二:平凡社新書)

   副題を日本的スピリチャリティーの系譜として、鎌田東二が二人のMK、南方熊楠宮沢賢治について書いている。鎌田さんは、「神道とは何か」「身体の宇宙誌」など多くの本を書いている。仏教、神道宮沢賢治、妖怪学など幅広い著作がある。
 この本では、南方熊楠密教曼陀羅の世界観と、宮沢賢治法華経世界観との対比だけでなく、賢治の語る蓮如の白骨の御文、熊楠の大日和讃など熊楠仏教と賢治仏教の対比や華厳経の思想との比較など興味深く語られている。又、賢治の妖怪物語や熊楠の妖怪民俗学などの比較も面白かった。
 賢治の詩、物語が法華経、仏教的世界観がベースにあることは承知して、賢治の作品を読んできたが、今回鎌田さんのこの本を読んで、もっと深い世界観が「春と修羅」などの詩に込められていることを改めて教えられた。
 終章での二人の天台本学思想として、熊楠は分子生体博物学、賢治は分子生体進化学として、もしくは、熊楠は博物学的生命主義、賢治は法華銀河生命主義ととらまえての分析が面白かった。
 改めて、熊楠、賢治を読み直してみたいと思った。