玄侑宗久さんの「中陰の花」を読んだ。
- 作者: 玄侑宗久
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/01
- メディア: 文庫
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そういう意味で、この小説は自分にとって面白く、意味のあるものだった。
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予知能力を持つという「おがみや」ウメさんの臨終に際して、禅寺の住職則道とその妻圭子の織り成す会話から、「死とは何か」「魂とは何か」を見つめた作品。本作は肉体的な死を迎えた後、いわゆる「死後の世界」を主なテーマにおいている。玄侑宗久さんの実際の体験をベースに書いたという。玄侑さんが断定的ではなく、日本人の中にある原始信仰のこころをさらっと(深く)書いているところが好感がもてると思う。
帯に「宗教と呪術の次元が重層する日本人の無意識の現実に、玄侑氏はほの暗くやさしく触れようとする。」(日野啓三)、「こうした主題は人間が『存在』についての認識をもつ唯一の生命体である限り常に、そして合理がいたずらに幅をきかせる現代となればなるほどますます新しく、他にもまして文学の正統な主題なのである」(石原慎太郎)とある。小生、あまり文学のことは分からないが、この小説が芥川賞をとったことがうなづけた。
中陰とはこの世とあの世の中間のことで、「満中陰忌」とは中陰が満了すること。四十九日が済んだこととのこと。12年前に「チベット死者の書(バルド・トドゥル)」(バルド=中有=中陰・トドゥル=読み聞かせる)を読んで、中陰という意味の納得がいった。チベットにこういう思想;宗教があったことに衝撃を受けた。
“死者の書”は埋蔵経の一つで、紀元8,9世紀にインドの僧パドマサムバヴァが著した経典とされている。この本は死にゆく人に、魂が生まれ変わるまでの四十九日間、死者の耳元で語りきかせる死者の霊魂の導きの書といったものだろうか。この本を読んで仏教を今までとちょっと異なる角度から考えることができるようになったと思う。
三万年の死の教え―チベット『死者の書』の世界 (角川文庫ソフィア)
- 作者: 中沢新一
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1996/06
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