私の3冊

 岩波文庫創刊80年記念で各界著名人に岩波文庫から3冊を選んでもらうという企画があった。そのアンケート結果が「図書」の2007年増刊として出されている。「図書」は岩波書店が発行する読書家向けの雑誌で、同様の読書家向け雑誌が、新潮社や筑摩書房、集英社などから出ている。どれも非売品か、一冊100円ほどの値段がついているが、大きな書店ではCasherの脇に自由に持ち帰っていいように置いてある。各出版社が宣伝のために大きな書店には何十冊か置いていくのだろう。岩波書店に勤めていた次兄が、昔、1年間送ってくれたことがあった。年間購読を申し込むと年間1000円なのですが、年間購読するほどではない。私は書店に行ったついでに、積まれているそれらをぱらぱらとめくり、面白そうな文章が載っていると、いただいて帰る。岩波の「図書」は私と同じような人種が多いのか、書店の棚には、すでに持っていかれた後で、ないことも多い。
 さて、3冊の文庫ですが。232人の著名人のアンケート結果では最も多かったのは、「きけわだつみのこえ」だった。ちょっと意外だった。ちなみに10年前は九鬼周造の「いきの構造」、20年前は中勘助の「銀の匙」だったという。
 漱石の小説や、平家物語風姿花伝や外国のものなど、かなりバラけてはいますが、それぞれの人が、選んだ寸評を書いているのが面白い。小沢昭一が「日本唱歌集」「日本童謡集」をあげたり、小室等が「意識と本質」(井筒俊彦)などを選んでいるのも面白い。 だれがどんな本を選んでいるのか、ひととおり読んでみた。有名な小説などは別にして、「コーラン」(井筒俊彦)「意識と本質」「忘れられた日本人」(宮本常一)、「三酔人経綸問答」(中江兆民)、「風姿花伝」などが比較的多くの人に選ばれているのも発見だった。
 「忘れられた日本人」や「三酔人経綸問答」など、以前から何かのきっかけで読もうと思って購入してあるのだが、積読のままになっている。この「図書」の“三冊の本”を読んで、新たに読みたいもの、読み返したいもの等が出てきた。
 皆さんも、ご関心があれば是非大きな書店で「図書」を入手されたらばと思います。なくなっていたら、図書館でご覧になれるはずです。
 私の3冊はなんだろう。いろいろな方が解説などを書いているもの、何度も読んだものという観点から選ぶと、「歎異抄」「般若心経・金剛般若経」「徒然草」辺りだろうか。岩波新書講談社学芸文庫の3冊とかもあれば面白いと思う。全文庫、全新書からもっと多くの方々のアンケートによる3冊を知りたいとも思った。